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4.

※イチルside

「ところで、…モチヅキはいないの?」

なんでもないような口ぶりだったが、ホーリエの澄んだアメジストの目線がさっと素早く部屋の中を走り抜けたのを見逃さなかった。その目が細まって鋭い光を灯していたのも。

「今はいねぇよ。ふらって出ていった」

あいつは風属性だからか、軽いところがあって、目を離した隙に消える時がある。

だが、俺の元に戻ってくると分かりきっているから心配はしてない。それよりも、今は緊張した表情を浮かべるホーリエが気になった。先程までふざけ合っていたとは思えないほど硬くなっている表情に、俺まで緊張してしまう。

右耳に横髪をかけるその動作が緊張している時特有のものだと、つい最近知った。そして、実はその動作を滅多にしないことも。

「どうした?タクがどうかしたのか」

「あ、…うん。あのさ、…前から気になってたことがあって。…気を悪くしないでほしいんだ」

歯切れの悪い言葉だった。

言葉もなく見詰めれば、俺が催促していると悟ったホーリエが言いにくそうに口を開いた。

「…昔、異なった世界から来たって、モチヅキが言ってたの覚えてる?昔は人間だったけど、この世界に来て聖獣になったって」

「覚えてるが?」

ラニアで襲撃を受けた後にしてくれた話だ。

覚えている。細部まではっきりと。違う世界で生まれ育ったことも、この世界に来てからの話も。あの時心細そうに俺の肩にもたれかかっていた細い体も、不安げに俺の袖口を握りしめていた華奢な指も、緊張しきってわなないていた唇も。

あの時の言葉に嘘なんてなかった。胸を張って断言できる。なのに、どう言おうか迷って何度も口を開けたり閉じたりしてから、ホーリエが言った。

「それっておかしくない?」

「は?」

「聖獣と人間は別物なんだよ。同じ人間の両親から生まれてくるのが人間であるのに対して、自然から生まれてくるのが聖獣だ」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。