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2.

※イチルside

だが、救いの神は降臨していた。

『もう仕方ないわね』

のんびりと浮きながら傍観していたマーメイドが思いっきり盛大な溜め息をついたと思ったら、こちらに向かって手を伸ばした。その直後、手に持っていた水鉄砲の重みが一気に増す。

トリガーを引けば抵抗のない空気の感触ではなく、確かに重い水の感触だった。

マーメイドが中に水を入れてくれたのだ。

「それ反則でしょ!」

『大人気ないわよ、ホーリエ。イチルが風の王を自由にもふもふできるからって』

「は?それが理由?…うわ、」

「う、うるさいなぁ!!」

引いた目で見れば、彼の顔が赤くなった。

マーメイドはやはり少し苦々しい笑みでホーリエを見ていた。彼女の周りに浮かべられている澄みきった水は、骨を刺すような寒い夜でも氷になっていないからやはり特別なものらしい。

それは空中でまとまり、波打ち、頼りない月の光を揺らめかせて地面に長く伸ばす。幻想的なその風景に目を奪われそうだ。

だが、とりあえず、

(やられたらやり返すのが道理だよな)

満タンになった水鉄砲をホーリエを向けて、反応する前にトリガーを引けば、

「うおあ!?冷た、」

ぴしゃ、と見事に顔面に命中した。

じとりとした目で見られたが、清々しく無視を決め込めばマーメイドが軽く両手を上げていたから、パチン、とハイタッチをした。

「水も滴るいい男じゃねぇか」

むすっとされたのも想定内だ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。