※イチルside
「ほら、ほぉら、もっと頑張りなよ!」
「ホーリエお前って、」
「そんなんじゃいつまで経っても魔法が使えないよー、王子様。ふはははは!!」
「…思ったよりも悪役が似合うよな」
ぷひゅー、と手に持った水鉄砲からただの空気が間抜けな音を立てて出てきた。
事の始まりは遡ること一時間前。
俺が魔法の練習をしたいと思ったことだ。
タクはどこかに行っていて不在だし、自分で練習するには勝手が分からない。だから、魔力を使うのが上手く、白銀の魔術師とさえ呼ばれているホーリエに練習に付き合ってもらうことにした。
練習方法が分からなくて首を傾げていたところ、ホーリエが提案したのは単純明快な方法。
水鉄砲遊び。
といっても、中に水はなく、水は自分の魔力から作り出さなければならないルールだ。
敵の動きを観察し、反射能力を頼りに動き、弾切れを起こさないように上手く調節しながら水を生成する、つまり魔法を発動させる方法は確かに効果が期待できる。複数回の発動と魔力の残りを常に知ることは実戦で役に立つだろう。
だが、問題は、
「…いじめじゃねぇか、これ」
水が生成できないんだ。
確かに最初に説明は受けた。だが、おらぁ、なんて見た目に反した逞しい声と共に手の平から水を出されただけで、その説明で納得し、理解できる初心者がいれば割と真面目に会ってみたい。
つまり、冬の凍える夜中に、俺は一方的に水鉄砲から放たれた水を浴びせられている。俺はまだ一回も水を出せていないのに、だ。
「ほら、反撃しないの?しないのー?」
一応避けているから直撃はしていないが、子供が遊ぶような無邪気な水鉄砲がこんなにも悪意に満ち溢れた武器と化すと初めて知った。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。