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7.


その後は救助活動に勤しんだ。

風で尻尾を持ち上げたりして解けるか確かめてみたが、俺の考えた通り、風が効かない。俺の風が効かないのは光か闇の聖獣のみで、この大蛇は見た目からして闇で間違いないだろう。

だから、絡まった胴体を解くために大蛇に俺の指示通り動かせて、なおかつ俺とオーツェルドで尻尾を引っ張ったりした。オーツェルドは逃亡しようとしたが、俺が捕獲してきた。

因みに、尻尾を引っ張ったり、胴体を踏んだりしたら喜ばれたから手加減はしていない。

そして、巨体との格闘の末、ようやく解けた。

『ありがとう。助かったわ』

ぱち、と可愛らしいウィンクが飛ぶ。

『アタシは闇のSランク聖獣バジリスク』

バジリスク。向こうの世界で聞いたことがある。この大蛇と目が合った人間は石になってしまう。こちらの世界では石にこそならないが、オーツェルドは先程のウィンクで硬直している。

だが、そんなことよりも聞きたいことがある。

一歩前に進むと、俺の身長に合わせてバジリスクが頭を下げてきた。手のひら程ある大きな目が俺に向けられて、深い深い灰色の虹彩が僅かに開く。

「…君は、昔の俺を知っているの?」

笑うように彼女が割れた舌を出した。

『えぇ、知ってるわ。昔のあなた、といっても雛に孵(かえ)る前の卵のあなただけれど』

そして、彼女が苦笑いを浮かべる。

ほんのりと懐かしさも含まれていた暖かいその眼差しは、まっすぐ俺に注がれていた。

『だから、…正直に言うとあなたがアタシを知らないのは当然のことなのよ、風の王様』

ざわり、と木の葉を散らし終えた冬の木の枝が冷たい風に揺れた。その音は僅かに寂しいものだったが、森全体で共鳴する優しい音でもあった。


風が吹く。運命が、廻(まわ)る。

俺はずっと昔から本能で知っていた。

風が吹く先に俺の行くべき場所がある、と。

そして、大空を自由に駆け巡るその風には、言葉では到底言い表せない魂を揺さぶるような懐かしい香りがある、と。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。