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過去を知る者と鍵


オーツェルドの言葉に拗ねて、怪我しない程度の風の刃を飛ばしてふざけて。こんなにも切羽詰った状況だというのに思いっきり笑った。焦る気持ちもあるが、肩の力が抜けて楽になった。

ようやく、息が出来るようになった気がする。

そう感じるのは確かに思いっきり笑ったのもあるが、頼もしい仲間が傍にいることも理由だと思う。オーツェルドとホーリエとマーメイド、彼らにどれだけ救われたんだろう。

ホーリエを守るのは自分の役目だとオーツェルドは言った。だが、いざとなったら俺が三人の大事な仲間を守ると誓うよ。

(ありがとう。…感謝しきれないよ)

そんなことを考えていた時だった。

オーツェルドが唐突に躓いたのは。

「う、ぁああ!?」

「お、オーツェルド!?」

まぁ、林だから木の根とか大きめの石とか躓きやすいものがあっても全く不思議じゃない。オーツェルドだって持ち前の反射神経で体勢を立て直して、地面に激突する前に受け身を取った。だが、俺達が驚いたのは躓いたということにじゃない。

『んぎぃあやぁああああぁああああううぅううるぅんんぅええぇええええぇぇえぇええ!!??』

直後に続いたこの悲鳴だった。

林の、というかもっと奥の森になっている山のどこから凄まじい悲鳴が聞こえてきて、思わず凍りついてしまった。目線だけで隣を見れば、オーツェルドも呆然としていて、口を半開きにしている。

俺達がアイコンタクトで事態を確認する暇もなく、ドドドド、と地響きと共に何かがこちらに近付いてくる。近付いてくると断言できるのは、徐々にその地響きが大きくなっているからだ。

そして、地響きが揺れと砂埃を伴うようになった頃、凄まじい悲鳴は奇妙な雄叫びとなり、色々な騒音と共にその主が俺達の前に姿を現した。

それは、

『貴様俺の尻尾踏むなやぁぁああああ!!』

巨大な蛇だった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。