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6.


まったく、鋭い。俺がイチルを恋愛の意味で好きでいるのも、イチルが厄介なことになっているのも、それに関して何も話せないのも、彼はきっとたくさんのことを見透かしていたんだろう。

それを全て知った上で、待ち受ける未来を予想した上で、独り占めするなだなんて冗談めいた言葉で隣を歩み続けると俺に告げたんだ。

独り占めをするな。

苦しくても、悲しくても、最後まで苦難を分かち合う覚悟はとっくにできている、と。

きっとオーツェルドも、…そして、ホーリエもこの旅に加わることを決意した瞬間から、未来を覚悟していただろう。この世界に詳しくなった今なら分かる。命を投げ出す覚悟がないと、聖剣だなんて神話クラスのものに関わらないはずだ。

あの時は分からなかった事の重大さ。聖剣の封印に力を貸すと言ったホーリエも、共に旅をすることに同意したオーツェルドも、最初から中途半端な気持ちなんかじゃなかった。

危険なんて最初から知っている。

それでも、共に立ち向かうって決めてた。

「オーツェルド、これはあんたが考えている以上に危険なんだよ。今から相手にするものは魔獣だなんて可愛らしいものじゃないんだ!」

気持ちは嬉しい。だが、どうか引いてほしい。

そう思う俺に反して、オーツェルドは一歩だけ距離を詰めた。ザリッ、と冬用の厚いブーツが林の小石を踏みしめた音がする。冷たいその音と共に、射抜くような鋭い視線が降り注いできた。

「なぁ、お前が鳳凰、…風の始祖様として俺の前にいんなら命令しろ。俺はもうこれ以上なんも言わねぇし、黙って従うぜ。…だが、」

ザリ、ともう一歩近付いてくる。

だが、引かずに俺より頭一つ以上オーツェルドを睨むようにして見上げれば、まるで対峙するような視線と絡まりあった。強くて揺るがない漆黒の隻眼。

「俺の目の前にいるのが俺達の仲間、モチヅキなら、…お前が黙れ。忠告はもういい」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。