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同胞(はらから)


「いやぁ、悔しいですね。…と言っても、私がイチル様に勝てたことなど一度としてなかったのですが…。あなた様に騎士団長の座を明け渡すべきかもしれませんね」

「冗談もたいがいにしろ。お前が炎を使っていたら俺に勝機はなかったが?」

「そんなことしたら本気で殺しに来るでしょう?炎なんて使う前に負けてますよ」

「お前はいつもそう言って本気で来ない」

「いえ、私は本気でした。それに、剣だけで勝負するのは騎士の誠意であり、剣において私はあなた様の足元にも及ばないのも事実です」

レイロさんは悔しそうに笑った。

だが、悔しそうにしながらも憧れを秘めたキラキラとした眼差しから、彼がイチルに悪い感情を持っていないのは明らかだった。

一度も勝てたことがない、その言葉からレイロさんは最初から勝機を見いだせていなかったんだろう。それでも剣だけで真正面から勝負を挑んだ彼は、騎士と呼ぶにふさわしい高潔さを持っていた。

(レイロさん、すごい!)

それ以上にイチルは格好いいけど。

俺はまだ興奮して枝の上でぴょんぴょん跳ねていたが、ふと近くから知らない声が聞こえた。

近く、だなんていうよりもむしろ吐息がかかるほどの至近距離から、クスクスと笑う悪戯っぽい声が聞こえてきたのだ。しかも、それは背後からで、声が聞こえる前に気配がしなかった。

『あの王子様も意外とやるね』

「(え!?はっ、え!?何!?)」

ひっくり返りそうになるのを耐える。

反射的に振り返れば、俺の後ろに何かいた。何か、を判断するには焦点が合わないほど至近距離にいたから判断できなくて、とりあえず視界を確保するべく後ろに跳ぶ。

「(ちょ、近っ!)」

だが、跳んだ先に枝はなかった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。