（は、速い、）

もはやそうとしか言えない。

二人の戦いはもはや格が違っていた。

始まりの合図と共にイチルが剣を抜いたが、剣を抜く動作からそのまま流れるように自然な動作で斬り上げた。レイロさん相手に、手加減をする気はないらしい。

レイロさんは重心移動だけでかわして、攻撃から防御に移る前のイチルの腹を狙う。だが、イチルの剣のスピードが速く、斬る直前で交わった。

キィイン、と耳につく高い金属音。

金属同士の激しい摩擦に火花が散った。

先に引いたのはレイロさんだった。だが、それを逃がす筈もなく、追撃がしかけられる。レイロさんの顔が衝撃の重みに顰められた。

レイロさんが大きく踏み込む。それでイチルの背後を取ったが、レイロさんの攻撃よりも早くにイチルが気配を察知して、振り返らずに剣だけで背後を斬った。

振り返っていないのに鋭い剣先はピタリとレイロさんの喉に合わせられていて、慌てて避けた彼の喉に一筋の血が滲む。

目で追うだけで精一杯の攻防。だが、本人達は相手の剣を判断して、防御の弱い場所に斬り込み、体を動かしながら次の一手を予測している。

（すごい…！！）

そして、戦局が傾いた。

最初からイチルの方が優勢だった気がするが、その一撃はトドメとなるには充分だった。

体勢を崩した、いや、崩したように見せたイチルのそのままの体勢からの斬り上げ。左斜めからの一撃は、パキン、とレイロさんの剣を真っ二つに叩き斬ってしまった。

鳶色の目が見開かれる。だが、彼が反応出来る前にイチルの剣先が首筋に添えられていた。

紙一枚入る隙間もなく、ピタリと合わせられた白い刃が勝負の終わりを告げる。ゴクリ、とレイロさんの喉仏が上下した。

「お見事です」

わぁあ、と歓声があがった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。