心が通じなければ言葉が通じないなんてルールはない。契約は一番信頼しあえる人間と聖獣が行うとしても、レイロさんともカルナダ様とも他の人とも初対面で言葉が通じた記憶がある。
魔力さえあれば言葉は通じる。
それがこの世界の常識だった。
なら、イチルとはどうして通じたんだろう。潜在的に魔力を持ち、今は多少なら使えるとしてもあの時のイチルの魔力はまだ潜在的なものでしかなく、表に出てきていなかった。存在しなかった。
大切だ、話がしたい、そう思うことが鍵であるとすれば、逆に話したくないと思って言葉が奪われたとしても不思議じゃない。
(あっ!)
ピィたんが言っていた。
ルイに話したくないことがある、と。暑いのが苦手だと知られなくないんだ。
つまり、言い換えれば、
(…話すことを拒否している?)
カルナダ様とドラゴンも、レイロさんとペガサスも、ホーリエとマーメイドも、互いに信頼しあってなんでも話せる仲だと思う。
ルイとピィたんがそうじゃないと言いたいわけじゃない。ただ、ピィたんはルイに迷惑をかけたくないあまり契約の本来の形を間違えてるんだろう。無二の仲間になる契約が、まるで主人とその召使のような形になっている。
それに、弱さを見せたら捨てられるなんて思うあたり、ピィたんはまだルイを心の底から完全に信頼していないのかもしれない。
俺なら…、たとえただの小鳥だとしても、王じゃないとしても、この世界に来たばかり時のように飛べなくても、攻撃力が底辺だとしても、言葉さえ通じなかったとしても、
(イチルは、きっと俺を捨てない)
そうはっきりと言いきることができた。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。