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8.


「滅多にお目にかかれねぇSランクが選び放題だってのに、隅っこの方に転がってるお前に意識を奪われて目が離せねぇ」

「転がっ…、」

「契約したらこいつはどうなるかとか、どうやって城で暮らすんだろうとか、大事な召喚の時にそんなことばっか考えてた」

イチルは気付いているんだろうか。

視界が奪われているからこそ心音が聞こえることに。だが、バクバクと緊張を伝える速い鼓動は耳から聞こえているようでいて、実はイチルじゃなくて俺の鼓動かもしれない。

どちらの鼓動か分からなくなって、だが、顔が熱くなって、せめて見られたくなくて必死にイチルに擦り寄れば気配がたじろいだ。

「まだお前の力は知らなかったが、…お前と契約したいとも考えてた」

「嘘つき。ユニコーンとかグリフォンが消えた時にがっかりしてたくせに」

「…それは、まぁ、」

困ったように言葉が途切れる。

だが、なんとなく分かったものがある。

(お互いに大切だって意識したんだ)

だから言葉が通じたのかもしれない。

選択肢なら他にもたくさんあった。他の聖獣もいたのにイチルは俺を気にしていた。他の聖獣に任せて城に残ることもできたのに、危険だとしても俺はイチルの傍にいたかった。

もしも、心が通じることで言葉が通じるようになるのなら。もしも、契約の力とは別に心の力が存在するとしたら。

(ルイとピィたんは心が通じてない?)

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。