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5.


その後はもうてんやわんやだった。

今にも謝りに乗り込んでいきそうなルイを必死に宥め、恨めしい目のピィたんが送る冷気がイチルの部屋に入らないようにさりげなく吹き飛ばす。俺を助けないイチルに不満はあるが、こんなことで風邪を引かれては困るんだ。

とりあえずイチルから煮込み肉を奪ったからもう肉は充分で、ルイがくれたフルーツの盛り合わせを満喫した。美味しかった。

そして、落ち着いて、いつしかピィたんが眠って、しばらく見守っていたルイも眠った。

安らかな寝息を確認してから窓を開ける。そうすれば、予想通り向かいの窓は鍵が閉められずに小さな隙間を残されているのが見えた。

────素直じゃないなぁ、もう。

小さな呟きには、

────うっせぇな。

不機嫌な声が返ってきた。

隙間から体を滑り込ませる。イチルはベットの端に腰掛けてランプの淡いオレンジ色の光を頼りに本のページをめくっていて、薄暗くて光も頼りないのに相変わらず金髪が綺麗だった。

人の姿になって窓を閉める。カタ、と窓枠の木材同士が互いにぶつかる音がした。

「…説明はあるんだろうな?」

ページをめくる手が止まる。

「やっぱり心配してたの?」

意地悪くそう言えば、ピクッと手が震える。

その震えで手が本から離れてしまったらしく、本はパラパラと閉じてしまった。どこまで読んだか分からなくなってサファイアの目が軽く俺を睨む。だが、返事を急かすように笑うと、イチルは逃げるように視線を逸らした。

…うっすらと耳を赤くしながら。だが、すぐに下ろされた横髪が耳を隠してしまった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。