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2.


「…何してんだよ、お前」

『なんでよりによってあんたなの?』

窓枠に頬杖を着きながらこちらを見るイチルが訝しげに眉を寄せた。

向かい合って窓が存在するとは知っていたが、まさかそれが宿屋だということも、泊まっているのがイチルだとも思ってもいなかった。

気怠げに不機嫌そうにしているだけなのに、恐ろしく顔が整ったこの王子様はそれだけで様になるんだから嫌味だと思う。イラッときたから、フォークに刺さっていた煮込み肉を奪ってやった。

風に持ち上げられてふわふわ漂う香ばしい肉を檻の隙間から入れて、そのまま齧りついた。

そこで、やっとルイがハッとする。

「ご、ごめんなさい!お肉!」

あわあわと焦る。だが、続いたイチルの一言に、ルイはさらに焦ることになった。

「気にすんな。それ俺の契約聖獣だから」

ピタリ、と面白いほど綺麗に動きが止まる。だが、固まったまま雰囲気が焦り出して汗が滲みだしているから相当焦っているんだろう。

だって、この時点で俺が知らない人から肉を奪ったどころの話ではなくなり、ルイは拉致してきた聖獣の契約主に対面してしまった。しかも、聖獣を勝手に檻に閉じ込めたまま。

たらたらと冷や汗が流れるのが見える。

確かにイチルからほんの僅かな怒気を感じた。抑えられてはいるが、チリッ、と肌を刺すようなピリピリとした空気を感じる。

────怒らないで。彼はまだ子供だ。

────お前に怒ってんだが?こんな状況になってるなら一言言ったらどうだ。

────ごめん。心配かけた。

心の中でそう言えば、溜め息が直接耳から聞こえた。ルイが大きく肩を揺らしたが、この溜め息は絶対に俺に向けられたものだ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。