『頼む。…ルイには言わねぇでくれッ…!』
泣きそうに震える声を無視することなんて出来たんだろうか。…少なくとも俺にはできない。
確かにこのまま黙っていたところで問題が解決するとも到底思えなかったが、俺は助言したり背中を押したりするだけの立場で、最終的にどうしたいかはピィたんが決めることだと思う。
不安そうに揺れるつぶらな瞳に見詰められて、俺は小さく頷いた。ぱぁ、と小さな瞳が輝く。
『手前、いい奴だな』
『でしょー?』
『ちまっこいのにな』
『…………。あのねぇ!俺が姿を変えたら君よりはずっと大きな姿になるんだからッ!』
『…昨日見た夢の話か?』
からかわれているんじゃない。至って真面目に微笑ましそうにキョトンとしているんだから、本気で夢の話だと思われている。ピィたんの真面目さに言葉を失って、黙って見詰め返すしかなかった。
そうしているうちにピィたんがあたふたと焦りだす。忙しなく目線を泳がせながらパクパクと口を開閉する姿は、触れてはいけない地雷のような話題に触れてしまったかのようだ。
『だ、大丈夫だ!』
何が。
心の中ではそう思っていても、口には出てこなかった。ピィたんがあまりにもキリッとした表情になっていたから。なんていうか、…凛々しい。
『腹いっぱい食わせてやるから』
『……………は?』
『なかなか食わせてもらえなかったからちびなんだろ?安心しろ。俺が腹いっぱい食わせてやる。ちゃんとデッケェ鳥に育ててやるからな!』
このイワトビペンギンは短気で喧嘩っ早いくせに、兄貴肌で涙もろいらしい。いつの間にか、俺自身さえ身に覚えがないのに、貧しい家庭の出身だの契約主がケチだの色々仮説が生まれて、常にお腹を空かせたちび鳥という設定になっていた。
(でも、ピィたんが味方についたら美味しいご飯が出てくるかもしれない…!)
だって、ここは飲食店だもん。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。