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8.


窓の外から冷たい風を送る。そうすれば脂汗は引いていって、気持ち良さそうに目を細めたのが見えた。さらに送ってやれば落ち着いたようで、ピィたんが地面から体を起こした。

『ありがとな、ちび』

『いや。…君さ、暑いのは苦手だって、きちんとルイに言ってないよね?』

『う、…まぁ。言葉が通じねぇし』

ピィたんが気不味そうに小さな翼を揺らす。

『じゃあ俺が伝えようか?』

『そ、それはいらねぇ!!』

突然の大きな声につい肩が跳ねてしまった。

ピィたんは必死の表情でこっちを見ている。もう目がうるうるしていて、泣きそうになっていた。その表情から、とある推測が生まれた。

言葉が通じないから伝えられないのではなく、最初から伝える気がなかったんじゃないんだろうか。

考えてみればそうだ。だって言葉が通じないとしても通じなくなったのは最近で、昔からルイと一緒にいたんだから伝える機会なんていくらでもあったはずだ。なのに、ルイは知らないからピィたんがずっと必死に我慢していたんだろう。

確かにルイともピィたんとも初対面だし、俺の属性の子でもない。だが、放っておけなくて、じとりとピィたんを見ていれば目線が逃げていった。

そして、ついに、

『心配させたくねぇんだよ』

ピィたんが、ポツリと呟く。

『…それに飛べもしねぇなんの役にも立たねぇし、脆弱だし、…きっと捨てられちまう』

空気の中に消えていってしまいそうな弱々しい呟きだった。だが、そこには胸が締め付けられるほどの強い切なさが込められていた。

逃がした視線でちらっと俺を見て、隠すことを諦めたように長く重たい溜め息を吐いてから、ピィたんは昔の話をしてくれた。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。