『にしても、手前みてぇなちびに契約主が…』
しみじみとした口調で呟かれた。
だが、舐めるなと文句を言い返す前にピィたんはふらふらと倒れてその場に体を丸めてしまった。グッと眉を寄せて苦しそうにしている。
『どうしたの?』
そこで思い出した。
ルイはピィたんの体調が悪いと言っていた。
ピィたんに近付けるだけ近付いて、だが、檻があるからそこにへばり付く。脂汗さえ滲ませて、ピィたんは速い呼吸を繰り返していた。
『ちょっとしたら良くなる。ちびが心配することじゃねぇさ。大丈夫だから』
『そう言われても、』
隙間だけ小さく開けられた窓を風の力でさらに大きく開け、新鮮な空気を部屋の中へと送ればピィたんの顔色が少しずつ良くなった。
(…もしかして、)
空気の流れをたどる。そうすればこの家には二本の煙突があることが分かった。
共に一階の料理場から伸びているが、一本は家の中を通過せずに外に煙を出すもので、もう一本は家の壁の中を通った後に外に煙を出すものだ。たぶん、夏用冬用と分けられていて、後者の冬用の煙突は室内を暖める暖房の役割もある。
今使われているのは冬用のもので、この家は飲食店をやっているから調理で熱された空気が大量に煙突を通過する。つまり、暖房が効きすぎてる。
で、ピィたんはペンギンだ。
(そりゃ具合が悪くなるわけだ)
ちらっと部屋の隅に置かれたピィたんの寝床を見た。ルイは綺麗に整理しているが、毛布やらクッションやら保温のものを置きすぎている。
ルイに悪気はないと思う。ただペンギンがどういうものか知らなくて、ピィたんに寒さを感じさせなくて色々用意したんだろう。だが、それはペンギンにとっては逆効果だ。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。