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5.


『とっとと出てけ、べらぼうめ!』

だからといってこの状況は何なんだろうか。

ルイの家は飲食店をやっているらしく、食堂のようになっている一階を通り抜け、俺の鳥籠は二階の自室の窓際に吊り下げられた。

そこまではよかった。問題はそれからだ。

店の手伝いがあるから、とルイは俺を放置して部屋を出た。ルイが部屋を出る前からひしひしと刺さるような視線を感じたが、出た途端にその視線は爆発しそうな怒気へと変わった。

そして、部屋の隅でむくっと起き上がった何かが勢いよく突進してきて、ご丁寧に椅子やらテーブルやらをよじ登って窓際に登ってきてはパシパシと小さな翼で憎々しげに鳥籠を叩いている。

『出てけ!出てけよ!手前(てめぇ)なんかにルイは渡さねぇぞ!ルイは俺と契約するんだからな!』

『…俺、ルイに誘拐されてきたんだけど?』

『てやんでぃ!!ルイは、ルイは…!』

と言った傍から、翼で鳥籠を叩き続ける小さなイワトビペンギンの大きな目が潤んでいく。ぴょこっと顔から飛び出ている眉のような黄色い羽が、鳥籠を叩く度にひょこひょこと揺れていた。

たぶん、彼がピィたんだと思う。

ペンギンだからルイが鳥を選んだ理由には納得した。だが、はっきりと言えることがある。

(うちの属性の子じゃないから鳥を連れてきても…。むしろ氷属性の子を選んだ方が…)

鳥は鳥でも風属性の鳥じゃない。

もちろん、飛べないから悪いと言っているんじゃなくて、風と氷は性質が違いすぎているから俺にはピィたんのことがよく分からないんだ。

そんなことを考えているうちに小さなイワトビペンギンの大きな目に涙が溜まり、うるうるしだした。ぺち、ぺち、と叩く力も弱くなり、ついに、

『ルイもやっぱり飛べる鳥がいいんだァああ、…ん、っく、…ひっ、く…ぅああ…』

すごい勢いで泣きだした。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。