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4.


彼の名前はルイというらしい。

ルイによると、昔から大事にしている聖獣がいる。その聖獣と契約したいが、契約を申し込もうとした矢先に言葉が分からなくなってしまった。昔は互いの言うことが分かっていたのに、だ。

魔力がなくなったわけでもなく、その聖獣以外の聖獣とは無事に話ができるのに大事にしている聖獣とだけ言葉が通じない。

本当は契約して真名を教えてほしいが、言葉が通じなくなり、聖獣と呼ぶのも不便だから仮にピィたんと呼ぶようになった。

そして、ピィたんは最近具合が悪く、家にこもっているから話し相手になってほしいとのこと。

他とは話せるのに、大事にしている相手とだけ話せなくなる。俺とイチルの真逆のケースだ。

『ふーん』

逃げることなら簡単だった。

魔力も結界もないただの鳥籠なんて風の刃で簡単に壊せるし、逃げたい時に逃げられる。

だが、一見生意気であるルイの猫っぽい吊り目の奥に悲しそうな光が見えて、それが助けを求めているのが分かって、ただ俺の都合だけで突き放すことに躊躇いを覚えた。助けられるなら助けたい。

助けを求める人を突き放せるほど俺は非常にはなれない。だから、イチル達には申し訳ないが、少しだけ待ってもらうことにした。

『ピィたんと言葉が通じるようになったら、俺を開放してくれる?』

「約束してやらなくもない」

思わず笑いそうになった。

上からの物言いなのに、ルイは俺が嫌がらないかと控えめに様子を窺ってくる。鳥籠に閉じ込めているにも関わらず、栗色の瞳には緊張と不安があった。

もし、俺にも契約主がいると、大事な人を待たせているんだと、俺が泣き喚いて帰りたがればルイは逃がしてくれるのかもしれない。だからこそ、この優しい子供の力になりたかった。

『いいよ』

希望を見付けた子供の頬が綻んだ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。