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3.


真昼を少しばかり過ぎた陽射しは純白の薄いレースのカーテンを通ることによって、いくらか柔らかくなって室内に入る。穏やかな風が、ふわり、とそれを膨らませて舞わせた。

よく磨かれたガラスの窓から雲一つない秋晴れの空が見える。窓から入ってきた風は、まだ少しだけ熱を持っていた。

秋に入った今、大陸の中央に位置するこの国は昼にこそ名残りばかりの残暑を残すものの、朝夕は凍えるほどにまで冷え込む。

因みに、その寒さを考慮して、イチルは俺の寝床となる木の箱に程よく綿を詰め込んでいた。だから、夜も全く寒くない。

(妙に優しいところがあるんだよね)

レースのカーテンの透けた影が、イチルの読んでいた本の上に落ちる。

それがゆらゆら揺れるのを見ていると、遠くの方からキィンという金属同士がぶつかる甲高い音がした。その音はイチルにも聞こえていたようで、活字を見ていた目が止まる。

(これ、多分剣の音だ)

見たい。そう思ったのは不可抗力だ。

せっかくファンタジーの世界に来たわけで、魔法はもちろん、剣だって見たことがない。興味が湧くのは普通のことで、イチルの指先を軽くつついてはピィピィと鳴いた。

「ピィ、ピィ、ピッ!(見に行こう!ねぇ、見に行こう!イチルだって休憩しなきゃ!)」

「んだよ、突然」

端正な顔が顰められた。

「ピィイイイッ!!(いーこーおーってばぁ!)」

「マジで何がしてぇんだよ、このちび」

つついて、鳴いて、袖を噛んで思いっきり引っ張る。あしらってくる指先を避けながら時にはその指に乗って翼をパタパタさせていたが、ついには不埒な争いだと思い知った。

イチルには見にいく気がないらしい。

俺は遠慮せずに重い溜め息を長々と吐いた。…と言っても、小鳥の姿だけれど。

「ピ、イ!(こんの、引きこもり!)」

ピョンピョンと跳ねてテーブルの端まで移動する。

いまだに飛べないものの小鳥らしく跳ねて移動することは得意になった。最初は人間のように二本の足を交互に使って歩こうと奮闘していたが、この姿では効率が悪いらしい。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。