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2.


読書はイチルの毎日の日課だ。

それも娯楽じゃなくて、勉強。歴史書だったり、隣国の地理や産業についてのものだったりといろいろなものを読んでいる。

政務を担っていないわりには活字を睨む目は真剣で、一度読み始めたら次々とページをめくる手を止めない。

イチルが断ったのか、それとも魔法が使えないから期待されていないのか、理由は分からないが、教師はいない。毎日毎日一人っきりで勉強をする。

俺はというと、不思議なことにこの世界の文字を理解出来ていた。向こうの文字とは違うが、それでもすっと意味が入ってくる。その感覚は初めてだとは思えないほど、本当によく体に馴染んだ。

(今日は契約関係か)

──────聖獣との契約。

人は契約することで聖獣の力を借りることが出来る。だが、それは主従関係などではなく無二の仲間の関係である。

契約の方法は二つ。目の前にいる聖獣と契約するか、魔法陣を敷いて自らの魔力で相手となる聖獣を呼び出して契約するか。

後者の場合、術者の魔力と同ランクの聖獣が出現する場合がほとんどだ。

だが、前者で聖獣が術者より高いランクにあった場合、契約を拒否されることがある。

契約出来たとしても暴走した時に術者に食い止める力がないから、自分より高ランクの聖獣との契約は勧められていない。

契約の可能性がある属性は六つ。だが、光と闇の聖獣は大変珍しい。

一度に契約が可能なのは一体だ。

術者の魔力に引き寄せられた聖獣が複数体いる場合、一番強いものが魔法陣の上に姿を現す。

(契約の前提に魔力が必要なんだよ?カルナダ様にドラゴンがいるからって、別に焦らなくてもいいと思うけど…)

そう思っても、食い入るように本を読むイチルに何も言えなくなった。たとえ俺が人間の姿だったとしても何も言わずにただ黙って傍にいただろうほど、そのサファイアは真剣だった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。