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力に伴う責任


直後、獣の咆哮が響きわたった。

弾かれるようにして神殿の外に出ると、シルフがすぐに後ろに続いた。夜だからあまりはっきりとは見えないが、かなりの数らしい。空気の揺れからざっと数えると二十体前後だ。

「町全体に結界を張れる?」

『出来ますが、強度が低くなります』

「なら、この神殿の付近は?魔獣の攻撃を防ぎきれる強度を維持してほしい」

『神殿の付近なら問題はありません』

シルフに向きなおった。

「町人達は君に助けを求めるよ。きっとここに集まる。…だから、ここに来たら守ってやって」

いざこざなんて今は忘れて、大切な人達を守って。

しっかりと目を見て言えば、彼女も頷いてくれた。俺が言わなくとも彼女はきっと町人達を守るだろう。かつてこの町を愛した彼女が、こんな時に町人達を見捨てるとは到底思えなかった。

「俺は逃げ遅れた人達を助けに行くから、君は防御にだけ専念しておいて」

頷くのを確認して、前を睨んだ。

ひどく不思議な感覚だった。

魔獣が怖い。話には聞いていたが、この目で見たこともないそれが恐ろしい。理性もなく人を襲う獰猛な魔獣を相手に、まだ魔法に不慣れな俺は何が出来るのか。そんなことは分からない。

だが、守らなければならないと思った。イチル達はまだ眠っているかもしれない。リィシャとヨトが怯えてしまう。逃げ遅れた人達が傷つく。シルフに戦わせるくらいなら俺が戦いたい。

守りたい。…俺が、守る。

そう思うだけで力がみなぎった。

風を切る翼が欲しい。強くそう思っていると、今まで小鳥に戻れなかった体がみるみるうちに変化していくのが分かった。だが、それは小鳥じゃなくて、ホーリエ達と戦った時の大型の鳥だ。

小鳥よりもずっと力強い翼に、長く垂れた尾羽。シルフの大きな目に映っていたのは目が冴えるような純白を持った鳥だった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。