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風属性第二位


ヒッポグリフと別れを告げて、食料を分け与えるように皆で夕食を食べた。俺達はこの町を出ればまた簡単に調達出来るから、ほとんど全ての穀物や干し肉をリィシャとヨトに与えた。

ずっと考えていた。

シルフをどうやって説得するのか。

王になって間もない、というより、どうして自分が王になったのかすら分からない俺が、どういう言葉を使って彼女に接触するべきか。

この町の用は早めに済まさなくてはならない。皆は何も言わないけれど、町についても目的を言わない俺に不信感が湧き始めている。同じパーティーの仲間で疑心暗鬼になるのは避けなければならない。

シルフに会って、説得して、この魔王に関する情報を手に入れた後、正体を明かそうと思う。

いつまでも彼らを騙してはおけない。

だからこそ、一刻でも早く彼女に会うんだ。

カツン、と静寂の夜に靴音が響いた。

皆が寝静まったのを見計らって、そっと抜け出してきた。欠けようとする直前のまだ丸い満月が真上を通りすぎたばかりの真夜中、明かりの消えた暗い町を抜けて神殿まで来た。

神殿のすぐ外に訪問者を拒絶する魔法が施されてあった。恐らく結界だと思う。だが、それは俺には発動しなかったらしく、夜風が頬を撫でただけだった。因みに、正面から入った。シルフに会うのが目的なのだから、当たり前だ。

中に入れば、そこはホールに似ていた。

ステンドグラスを通して差し込んできた満月の光は色鮮やかになって、とても広い大理石の床に落ちる。大理石が純白の物だから、よく映えた。

キラキラとほのかな月光で煌めく鮮やかなステンドグラスと、それをいくらか白っぽくして反射する床。ステンドグラスをよく見れば風属性の緑色を基調としており、穏やかな風が吹く美しい四季や様々な風の聖獣達が描かれていた。

毎年収穫の季節になれば、このホールはシルフへの献上品で埋まってしまうんだろう。そして、皆が笑顔になって、その年の収穫に感謝する。

なのに、今年はとても少ない。

痩せた実を僅かにつけた麦が数袋と、しおれたような野菜。水瓶は一つしかない。それでも、町の人間達はこんな状況でも必死に捧げようとしている。

本当に月の光が綺麗な神秘的な夜だ。

…なのに、風は凍えるように冷たかった。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。