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後悔


「ここまでありがとう」

森との境界でヒッポグリフと向き合った。

すぐそこに広がる豊かな森。もうすぐ冬になろうとしている今でこそ枯れ葉が落ちて、木の幹の茶色が目立つが、春を迎えれば青々とした若葉でとても綺麗になるんだろう。

『王様大丈夫?今後は何に乗るの?契約聖獣がいなくなって、皆にどう言うの?』

「俺はどうにでもなるよ。契約を破棄したとでも言うつもりだから、心配しないで。それより帰り道はもう分かる?帰れる?」

『ここまで来たら分かるよ』

ヒッポグリフが鳶色の大きな目を細めた。

俺より高いその首にゆるく腕を回して、すがりついて擦り寄った。ヒッポグリフも擦り寄ってくれる。硬い嘴のひんやりとした冷たさも、柔らかい羽の感触もとても心地いい。

(…もうお別れだ)

最初からここまでの約束だった。

俺は彼をラニアまで送って、彼はラニアまで契約聖獣のふりをしながら乗せて走ってくれる。ラニアに着けばお別れだと最初から分かっていたのに、半月という旅は友情を芽生えさせるには充分すぎるほどの長さだった。

追い風に乗って荒野を疾走して、寄りかかって眠って、寝相が悪いからたまに蹴られて…。

これからの旅にヒッポグリフがいないのは、とても寂しい。だが、この危険な旅に同行するよりも、家に帰りたがっていた彼をあるべき場所に戻してやりたかった。

「…まっすぐ帰るんだよ?」

『うん』

逞しい首にすがりつく。ぎゅ、と抱きしめた。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。