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6.


「お姉ちゃん、この人もつれてく!」

その言葉には、全員が驚いた。

だが、次の言葉にはさらに驚いた。

「シルフ様と同じ雰囲気だもん!」

体が強張ってしまったのは仕方ない。

雰囲気というのは具体的に何を指しているか分からないが、もしもそれが風属性の高位聖獣であることを指しているとしたら…。

強張った体から出来るだけ力を抜いて、誤魔化すように男の子の地面に下ろしたが、不満げに見上げられたから二、三回頭を撫でておいた。

『小さい子供にはとても敏感な子がいるんだ』

ヒッポグリフが小さな声で教えてくれた。

「ヨト、雰囲気が同じって?」

「あのね、あのね、お姉ちゃん!このお兄ちゃんもシルフ様も、形はないけど広くて速くてすぅっとする何かがあるんだよっ」

皆は首を傾げていたが、俺には分かった。何が言いたいのかはっきり分かった。風だ。この男の子は風属性のことを言っているんだ。

これ以上言わせては不味い。もう一度男の子を抱き上げて構ってやれば、意識は俺の方へと向けられた。質問はまだ飛んでいるが、俺と遊ぶ方が楽しいらしくににこやかに笑っている。

ヒッポグリフとマーメイドから向けられたじとりとした眼差しは、きっと気にしたら負けだ。

結局、俺に懐いた男の子が離してくれなかったことにより、俺も無事に家に招かれた。

この二人は姉弟で、十二歳の女の子がリィシャ、五歳の男の子がヨト。町の中でも森に近いところに住んでいる二人は数年前に流行り病で両親を亡くしたらしく、その分リィシャがしっかりしてる。

自給自足の生活だが、今年の不作は一目で分かるほどひどいものだった。畑は乾いてひび割れ、雑草すら生えない。寝室と繋がってる台所には、たった少しの小麦粉と底の見えた水瓶しかなかった。

だが、マーメイドが水瓶を満たしてすぐに貴重な水を近所の人達に分け与えようと小さな水瓶に移すあたり、二人ともとてもいい子だ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。