「お兄ちゃん達は何しに来たの?」
この質問にホーリエは俺に視線を向けた。
だが、シルフに用があるとも言えないし、代わりとなる嘘も用意していない。そもそもどうして次の目的地をラニアに決めたのか、イチル達三人にも詳細は話していない。
俺が答えないと分かると、ホーリエは女の子に向きなおりとっさに答えた。
「僕達は旅の途中で、この町を通りかかったんだ」
「そう。宿はどうするの?」
「…僕達も困っててね」
「うちに来る?お兄ちゃん達いい人らしいし、あんまりおもてなし出来ないけど…」
これは願ってもいない申し出だ。
ホーリエの表情が綻んで、イチルとオーツェルドもほっとした雰囲気になった。だが、女の子はキッと俺だけを強気に睨むと、指さした。
「でも、あの人はダメ!」
「えっ?なんで!?」
「だってシルフ様を侮辱した!」
「侮辱したつもりはないんだよ…?」
そう言っても女の子は俺を睨み続ける。
これには結構本気で焦った。ホーリエの呆れた視線、オーツェルドの失笑、イチルの哀れむような眼差しを受けながらあたふたと弁解していると、トテトテと何かが歩いてくる。
ヒッポグリフの前で止まったその子供は、先程まで咳き込んでいた男の子で、女の子の腕から抜け出してここまで来たらしい。
無言だが、キラキラとした目で見上げてくる。
「ヒッポグリフが気になるの?」
地面に降りて、屈んで目線を合わせた。
だが、よく見れば、その子供のキラキラした眼差しはヒッポグリフではなく俺に注がれているようで、両腕を伸ばされて抱っこをねだられたから丁寧に抱き上げてみた。すると、きゃっきゃと嬉しげに首に抱き着いてくる。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。