それに対してイチルは窓から投げてくれた件からも分かるように、王子様だとは到底思えないほどの乱暴さを持つ。
権力に物を言わせることはないが、それでもカルナダ様とは正反対だ。
因みにこの二人は同じ両親から生まれたちゃんとした兄弟らしいが、ムカつくからイチルにだけは様付けしないと決めた。
そして、セットレイア王家は強い雷系の魔力を持つことで有名らしいが、イチルは契約どころか魔法すら使えない。
つまり、魔力量はまったくのゼロ。
臣下からすれば不安極まりないだろう。
それでも少なからず彼を押す派がいるのは生まれた時に受けた神託が関係しているらしいが、詳しくは知らない。
そして、この世界についてだが、この世界は俺がいた世界とはまったくの別物だ。
簡単に言えば、ここは魔法の世界。
指を鳴らすだけでランプに火が灯るし、どこからともなく大量の水を出現させて洗濯したり、手を振るだけで塵がまとまったりする。
そんな世界でもイチルは毎回マッチを使ってランプを灯したりするから、正直言って少しだけ親近感を持っている。
だが、魔法が当たり前の世界でのその行動は、かなりの落ちこぼれだ。
魔法にはランクがあって、最高がSS。その下がS、A、B、C、D、Eまで存在する。
Eは空気を温めたりするとても初歩の魔法。
Dはランプに火を灯したり、水を出したりするレベルの魔法で、別名生活魔法。平民はほとんどがD、Eランクまで使える。
Cからは少し性質が変わって戦闘向きの魔法となり、主に攻撃や防御といった性質を持つ。その中でも姿を変えたりと複雑な魔法は、特にランクの高いものが多い。
ランクが高くなるにつれて必要とする魔力も多くなるが、その分威力も大幅に高まる。
俺はまだ戦闘向きの魔法を一度も見たことがないから、具体的にCからSランクの威力の違いはよく分からない。
ただ、SSランクだけは人間には使えず、聖獣の中でもかなりの高位でないと使えない。
人間ではSランクが限界で、この城の中ではカルナダ様しか使えない。そのカルナダ様もSランクの魔法は雷系しか使えない。
しか、と言うと聞こえは悪いが、文官も武官も国中から集められた実力者が揃う王城だとしてもSランクを扱えるのは一人だけだ。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。