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3.


「水筒貸して。水を分けてあげるから」

だが、女の子は動かない。

警戒を顕にし、疑いを滲ませた目でホーリエを睨みながら、弟をきつく抱きしめる。

不安げにする弟がすがりつく力を強めたのを感じて、彼女は睨みを強めた。とても賢くてしっかりしている子だと思う。だが、やはり余所者の男は怖いようで小さく震えていた。

だから、助け船を出すことにした。

「大丈夫だよ。彼のことが信用できなくても、マーメイドは信用していい。聖獣、特に高位の聖獣は悪い人とは契約しないから」

これは結構有名なことだ。

心のまっすぐさは魔力の質と比例するらしい。聖獣は汚れた魔力を好まない。

強い聖獣ほど魔力の綺麗な人と契約したがる傾向にある。逆に言ってしまえば、強い聖獣と契約している者ほど穏やかであったり、正義感が強かったり、とりあえず性格がいい。

女の子は迷ったようだったが、マーメイドが手を差し伸べるとその手に水筒を乗せた。

一瞬のうちに膨らんだ水筒を受け取り、恐る恐る水を少し出す。澄みきった純度の高い水が出てくるのを見て、彼女は息を呑み、目を大きく見開いた。

「本当に?…いいの?」

「いいよ」

「っ、ありがとう、お兄ちゃん、マーメイド様!」

彼女はすぐに弟に水を飲ませた。咳が少しずつ落ち着いて、顔色がよくなってくる。

「本当にありがとう!」

「お礼はいいよ。ところで、いくつか聞きたいことがあるけど、教えてくれないかな?」

コクリ、と頷いた。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。