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2.


「ここの風、おかしい」

『だから風が死んでるって言ったんだよ』

「…今すぐシルフに会いにいく」

『俺もそうしてほしいけど…、…この町の人は余所者が嫌いだから、神殿に入れてくれないと思う。夜にしたら?人目も少なくなるし』

神殿の場所は聞かなくても分かっていた。

町の中央に建てられたその神殿は立派で、町の門をくぐった時から見えていた。

急いでしまう気持ちを抑えて、周りを見てみる。ヒッポグリフの言うとおり、町人達は皆揃って距離を取りながら警戒を剥き出しにした眼差しで俺達を見ていた。

『昔はこんなんじゃなかったんだけど、この一年で変わっちゃって…。こんな状態の町に客人なんて不自然だから警戒しているんだ』

その態度には納得できる。国の最西端に位置しているからもともと客が少ないうえ、最近は重度の水不足で秋の収穫もままならなかった地への急な来客。警戒していない方がおかしい。

今神殿に乗り込むよりも、先に宿を見付けて落ち着いた方がいいかもしれない。

「宿なんてなさそうだけど、」

『だって客がいなくて儲からないもん』

「ということは誰かの家に、…ってこんなに警戒心が強いのに誰が男四人を泊めようとするの」

その時、道端でドサッと倒れる音がした。

見れば倒れたのは五歳くらいのまだまだ幼い男の子で、ゴホゴホと咳込んでいる。隣には姉らしい少女がいて、向こうの世界で言えば中学生ほどの彼女は弟の背中を軽く叩いていた。

鞄の中から革の水筒を取り出したが、ここからでも分かるほどそれはぺちゃんこで、ほとんど水が入っていない。その貴重な水を全部飲み干しても、男の子の咳は治まらなかった。

それを見たホーリエが馬を降り、何か呟く。

すると空中から水が湧きだしたかと思うと、その水は人の形になり、マーメイドになった。

突如として現れた上位聖獣の存在にどよめきが走る。だが、ホーリエは動揺せずに姉弟の前にまで行くと優しく声をかけた。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。