頼りになる人だとは知っていた。
だが、服の上からでも分かる引き締まった体とか、程よく筋肉をつけた腕とか、思った以上に頼りになることを痛感させられた。
振り返った先、すぐ隣にある顔。幾千の星を散りばめた夜空よりも、その夜空を映す海色の瞳の方が綺麗だ。まっすぐ夜空を見上げるその目は未来への不安も緊張も無力感もなく、期待すら滲ませながら凛と揺らがなかった。
そして、その瞬間、ふと頭の中で声がする。
────タクとの絆が深まりますように。
それは契約主が契約聖獣と使う声みたいなもので、願えないだなんて言いつつ星が流れたタイミングでちゃっかりお願いをしているらしい。しかも、俺にバレないように無表情。
盛大に噴き出しそうになるのを必死に我慢するべく下を向いたが、肩が軽く震えたことには気付かないでほしい。イチルはきっと今寄り添ってる俺が自分の契約聖獣だって知らない。
笑いを耐えながら、知らないふりで返事をする。
────うわぁ、なんの脈絡もなく恥ずかしいことを言うねぇ。…あのね、イチル、もうすぐ戻る。
────あぁ、待ってる。
イチルの肩に寄りかかった。
会話は短くて、すぐに途切れてしまって、何も言わずにただ黙って星空を眺めていた。俺は何も祈らなかったけど、結局願いたいことはイチルと同じだから別に願わなくてもいいだろう。
それでも、もしも、もう一つ別のものを願えるとしたら、欲張りになれるとしたら、
(イチルの未来が明るいものでありますように)
だけど、正直に言ってしまえば、俺がついていくのだからどんな困難だって一緒に乗り越えていくつもりだ。それに、絆だって誰かに願わなければ手に入りそうにないものじゃない。
こんなに大量に流れ星が滑っているのに、満たされているから願いが思い浮かばなかった。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。