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14.


「俺も昔話していいか?」

「どうぞ」

イチルは無口というわけではないが、自分のことは語りたがらないから純粋に驚いた。

だが、これから話してくれることがずっとイチルの負担になっていることで、俺に話すことによって胸につっかえていた石が落ちるのなら、いくらだって聞いてもいい。

「俺は雷属性が強い王家に生まれて、その中でも歴代をしのぐ実力者である兄様を持って、兄様が雷の王と契約するのを見て…、」

ぽつり、と呟くように語る。

「兄様を恨んでたわけじゃない。ただ比べられたくなくて、…距離を取っていた」

知ってるよ。

イチルはカルナダ様を避けていたけれど、無礼な態度で接したことも食らいついたこともなかった。それは、たぶん、カルナダ様がイチルを大切にする気持ちに嘘なんて存在していないことを分かっていたからだと思うんだ。

カルナダ様だってすごいよ。王位争いが起こるかもしれないのに、態度を変えることなく兄として味方でありつづけた。

要は、イチルを誰よりも信用していた。

「聖獣の言葉を理解するのにも、契約するのにも魔力が必要だ。だから、ずっと俺には関係のないことだって割りきっていた」

つらい話をしているはずだった。

なのに、イチルはふっと頬を緩めては懐かしそうに、昔を思い出すようにとても柔らかくて優しい表情を浮かべた。

満月の光があるといってもやはり夜であるわけで、なのに、イチルへ深海のようなサファイアの瞳は明らかにキラキラと輝いていて、息を呑むほど綺麗な光を宿していた。

嬉しい、とその眼差しが言う。

「だが、俺にも契約聖獣ができたんだ」

そして、子供のように無邪気に笑う。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。