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7.


俺は床の上に叩きつけられ、相手の人物は鳩尾を抑えながら床に崩れ落ちた。鳩尾を抑えながら、もう片手は床を掻きむしっている。

(ごめんね。…でも、俺は悪くないから)

崩れ落ちていた人物は若干小刻みに震えながら顔を上げた。とても高い位置にあったその人の顔は、…呼吸を忘れるほど綺麗だった。

空を移したかのような青色の目はどんなサファイアよりも美しくて、切れ長なのに少しだけ涙目になっているのが可愛い。

それを縁取る金の糸のような睫毛は長くてキラキラしていて、同じ色の金髪はうなじあたりで綺麗に切られていた。

透き通ったきめ細やかな肌。耳たぶには垂れ下がるデザインのエメラルドのピアス。

そう筋肉質じゃないのに、服の上からでも分かるほど適度に引き締まっている。はっきり見える喉仏と、男らしい大きな手。

童話に出てくる王子様そのものだ。

女の子にもてるだろうな、とか考えながら呆然と見ているとその手が伸びてくる。

そして、その手は俺をつまんだ。

ぷらーん、と手足が垂れ下がる。地面が一気に離れて、王子様の顔が近付いてくる。もう美形だとか関心している場合じゃない。

(王子様、離して!)

そう言ったつもりなのに、実際に俺の鼓膜を揺らした音は、

「ピィッ!」

鳥の小さな鳴き声だった。

「んだよ、このチビ鳥」

「ピッ、ピィイ、ピ!(は?ちび?てか、俺が聞きたいんだけど、どゆこと?)」

違和感に気付かなかったわけじゃない。

王子様の顔の位置とか、つままれた時に床が一気に遠くなったこととか、それで気付けないほど鈍くはない。だが、認めたくなくて、まさかと思って、すがる気持ちで窓のガラスを見れば、


王子様は白い小鳥を摘んでいました。


(act.0 prologue 終)
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。