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11.


「お前は、俺達に害をなすつもりか?」

とても落ち着いた声。

俺の目の前でイチルは立ち止まった。こうして並ぶ機会がなかったからよく分からなかったが、イチルは俺よりも背が高い。深い青色の目は相変わらず綺麗で、目を奪われてしまう。

彼も俺に警戒を抱いていると思うが、この目をまっすぐ見て話をすれば信用してくれる、と根拠もなくそう思った。

「いや。むしろ手伝う気でいるよ」

「手伝う?つまり、情報を売ることは本当の目的じゃねぇってか。…だったら、俺達の旅に同行して力を貸してくれる理由は?」

「………………」

「…言えねぇか」

それはどうしても言えない。

だが、譲らずにずっと目を見ていれば、先にイチルが折れた。意外と簡単に逸らされた視線はそのままホーリエとオーツェルドに向けられた。

そして、相談ではなく、決定したとでも言わんばかりの声色で、

「自分の身を守れんなら、…来い」

二人は揃って目を丸めた。オーツェルドは単純にイチルの決定に驚いただけらしいが、ホーリエの見開かれた目にはまだ反対の色が見えた。だが、ホーリエが何かを言う前にイチルが再び口を開く。

「俺だって嫌ってほど腹の探り合いをしてきたんだ。人を見る目はあると思ってる」

その一言は彼の生い立ちを推測させた。

王族なら少なからず腹の探り合いをして生きてきたんだろう。それは俺にもよく分かる。

利益を求めて媚へつらう空気を吸いながら、こちらを陥れようと仕掛けられた罠を看破して回避する。いつしか相手の裏を勘ぐるのが癖になっていて、他人の言葉が信じられなくなる。

俺は友人に恵まれたからそうひどくはないと自覚しているが、イチルはどうなんだろうか。

小さな炎が揺れるだけのランプの薄暗さのせいかもしれないが、青色の目の色はいつもより濃い気がした。たとえるなら夜の海のような、見ていて不安になる色だったんだ。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。