(はめられた…!)
ホーリエは情報なんてどうでもよかったのだ。実際にホーリエも答えは知らなかった。情報じゃなくて、俺の行動に重点を置いたのだ。
「本当の目的は?」
そう言われても答えられるわけがない。
ひやりとした冷気が首筋に触れる。途端にあわあわしだすマーメイドは間に入ってこようとしたが、目線だけで制した。入ってきてくれたらこの状況からは脱出できるが、一から説明しなければならない。
「まぁ、ホーリィ、離してやれよ。見たところ駆け出しの情報屋でしかねぇし、聖剣の情報もたまたま持ってるだけだったんだろ」
オーツェルドが助けに入ってくれたが、俺は思わず眉を寄せた。だって、オーツェルドが俺の肩を持つ理由が見当たらなかったんだ。
「美人だし、一緒に旅したらいいんじゃねぇ?」
確かにありがたい。
だが、助ける言葉を選んでほしい。
俺は美人と言われて悪い気はしないが、ホーリエが一気に不機嫌になった。辺りの空気が氷点下を下回り、顔のすぐ隣で氷ができてしまった。
「っ、なおさらダメに決まってるでしょ!」
「お前誤解すんなよ?俺はお前一筋でだな、」
「でも、この人綺麗だし、もしかしたら…!」
「ホーリィ、待て、落ち着け」
目が潤みはじめるホーリエ。本気で焦りはじめるオーツェルド。ホーリエの感情の揺れに合わせて氷の槍がカタカタと揺れるが、うっかり俺の喉を切り裂く事態になるのは切実にやめてほしい。カップルの痴話喧嘩に巻き込まれて死にたくない。
二人とは別の意味で俺も必死だったが、ずっと傍観していたイチルだけは呆れたようで、はぁ、と仕方のない表情で小さく溜め息を吐いた。
そして、こちらに歩みよってくる。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。