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8.


「ところで、」

ホーリエが呟いた。

「あんたならもう分かっていると思うけど、僕達の旅の目的は魔王の討伐。だから、聖剣の情報だけじゃ足りないんだ。他の情報も欲しい」

恐ろしいくらいに澄みきった氷に似た瞳。

取り引きに応じるだなんて言いながらも警戒の色が薄まることはなくて、鋭さを保ったまま俺を見据える瞳に、彼は俺を試しているのだと知った。

「もちろん、情報屋なら売るよね?」

「…俺が知っている限りね」

「よかった。金貨半袋。正しい情報を教えてくれたら、この場で支払うことを約束するよ」

微笑んだ彼に、罠の内容を知った。

ホーリエは本当に情報を買うつもりじゃない。

情報を売って生活する情報屋に、金貨半袋もの大金。確かに聖剣の情報と比べると額は落ちるが、その自信のある笑みからしてホーリエは今から俺から買う情報を既に知っている。

答えを知ったうえで聞いてくるんだ。半袋もの金貨。すぐに手に入るし、比較的簡単な情報。俺が取り引きに応じざるを得ない状況を意図的に作り上げ、本当に答えられるかを調べる。

比較的簡単な情報を正しく知っているか。つまり、俺は本当に情報屋か。

ホーリエはまだ疑っているんだ。

(テストってわけ)

金を出された以上、情報屋に逃げの選択肢はない。

この一手は想像していなかった。まずい。俺はこの世界にあまり詳しくない。だから、たぶんホーリエが要求してくるものを答えられない。ゴクリ、と緊張に唾を飲み込んだ。

「魔王の名前が知りたい」

心の中で安堵した。傍から分からない程度に肩の力を抜いてリラックスする。

魔王の名前なら知っている。ついこの前、マーメイドが言っていた。答えられる。

だが、ホーリエから視線を逸らさなかった俺は、マーメイドの方を見ていなかった。彼女が必死な表情をしながら何度も首を横に振っていたなんて、全く知らなかったんだ。

「ノクト。魔王の名前はノクトだよ」

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。