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3.


「はっ、それは伝説にすら語られてねぇ情報だ。俺にどうやって信じろって?…そもそも、お前、なんで俺がその情報を欲しがってるって知ってる?」

「それは答えられない。けど、俺は持ってる」

ザリ、とまた一歩踏み出す。

イチルは逸らさずに俺を見ていて、俺も逸らさない。そして、取り引きしなくて損するのは君だよ、と自信ありげに微笑んで見せれば、訝しげに目を細めるのが見えた。

「…どうする?」

落ち着け、これは駆け引きだ。

イチルは俺があの小鳥だとは知らない。仲間だとは思っていないんだ。突然現れて、しかも、仲間内でしか知らない旅の目的も情報が足らないということも知っている。警戒して当たり前だ。

それに対して、俺が持っているのは聖剣の情報だけで裏付けるものがない。さらに、その在処も風の精霊に頼らないと分からない。

イチルを信用させることが出来るのは、俺の態度だけだ。俺の出方で決まるんだ。

(後ろめたさを見せちゃダメだ)

そうしたら、すぐに嘘がバレる。

また近付く。俺はイチルが理由もなく切りかかる人間じゃないと分かっていたからだが、まるで剣なんて恐るるに足りないと言うように、力に自信があるように近付き、彼を見上げた。

「まぁ、今すぐ決断してとは言わないよ。パーティーの仲間と相談してみたら?」

一度に信じさせてしまった方が楽だ。

それに、たぶん、マーメイドは俺だと分かると思うから、もし何か失敗した時にはさりげなくフォローを入れてくれるだろう。

「……分かった。一緒に来い」

「了解。いい返事を期待してるよ」

心の中でガッツポーズをした。

帰る時、イチルは無意識のようにポケットを広げた。知ってる。あのポケットには実は何も入っていなくて、俺に入っていいと言っている動作なんだ。飛べるようになった後もよく入っていたから。

だが、いくら待っても入ってこないことに小鳥がいないことを思い出したイチルは、ほんの少しだけ寂しそうな表情をして、ポケットから手を離した。

(…ごめん)

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。