設定は考えた。
俺は東から来た情報屋。詳しい国名を聞かれたら答えない。東を選んだ理由は、今から向かうのが西だから西を出身にしてしまうと綻びが出るからだ。
彼らに聖剣の情報を売りに来た。伝説ですら語っていない情報だから、それなりに高いと思う。金貨一袋あたり。情報の出処も回答拒否。名前は苗字の望月をそのまま使うつもりだ。
何回も設定を確認する。幸いにも、昔は会計として人前に出るきっかけが多かったから、これくらいの嘘はすらすらと言えた。
(嘘をついたり、お金を取ったりするのは申し訳ないけど、背に腹は変えられないんだよ)
イチル達が泊まっている宿屋の前に向かう。
だが、入る前、さっきまで自分がいた林とは反対側の林の奥から人の気配がした。表からは見えない奥の方にだが、人がいるんだ。
そういえば、小鳥の姿でも人間の姿でも、この世界に来てからは気配に鋭くなった。カルナダ様と初めて会った時も、ホーリエに氷の槍で攻撃された時も、空気の振動というか、とりあえずとてもはっきりと存在が分かる。
初めは風が存在を教えてくれていたが、最近は自分でも気配が分かってきていた。
その気配が正確に誰のものかまでは分からないが、よく知ったそれが気になって、気がつけば林の奥に足を勧めていた。落ち葉を踏む音が続く。
少し歩いて、開いた場所に出た。
そして、そこにいた人物に俺は目を見開いた。
(…イチル!?)
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。