なら、どういう理由で同行するのか。
これは完全に嘘をつく必要がある。
風の精霊に薬草を教えてもらって治療を担当しようにも、マーメイドは治癒魔法が使える。僅かに使える風の魔法で攻撃を担当しようにも実力不足だ。何よりこんな危険な旅に付き合う理由がない。
「あ、…ねぇ、風の精霊、道を示してくれる君達なら知ってたりしない?オリオンの聖剣の具体的な場所と、そこまでの道を」
元の世界でも、俺が迷子になった時に助けてくれたのは彼らだ。ならばこの世界でも、空気が存在する陸の上であれば知っているかもしれない。
予想したとおり、彼らは頷いてくれた。
「そこまで案内して?お願いだから、」
風の精霊達は嫌な感情を出さなかった。しかも、お願いと言った時には嬉しそうにふわふわと漂い始めた。お願いされたことが嬉しいらしく、秋の夜の少し肌寒いよそ風が吹き抜ける。
この条件なら、情報屋を装うのが正確だろう。
伝説にも語られていない聖剣の在処をお金で売る。そこまでの案内と称して、同行するんだ。因みに、仲間からお金を取るのはさすがに心が痛むが、見ず知らずの人がいきなり無償で協力してくれるのも疑われるだろう。
しかも、情報屋なら都合の悪い情報を渡さないのも不自然はないと思う。
「っしゃ、これで行こう!」
俺は、甘く見ていたんだ。
ホーリエの頭のキレとイチルへの忠誠心を。
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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。