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6.


どうしようもなく途方に暮れていると、川辺の草が不自然に揺れているのが見えた。全体ではなく、特定の一本だけがぶんぶんと犬が尾を振るように思いっきり揺れているのだ。

そして、風が俺をそちらに押していく。

「なに?」

訳が分からないなりにその草に近づいていくと、風が刃となってそれを切り取った。切られた草を摘むとまた別の草が揺れだす。

また近付いて、また切り取って、と何度か繰り返していくうちに俺は手の中にあるその草が全て同じものだと気が付いた。硬くはないが、キザギザに尖った草はとても特徴的だ。

「まさか、薬草だったりするの?」

風の精霊達は楽しそうに肯定してくれた。

結論から言えば、それは間違いなく薬草だった。しかも、希少とは言わないまでもそれなりにお金に変わる薬草で、手の平いっぱいのそれを夜の薬屋で売った俺は、二枚の金貨を手に入れた。

そのお金でいくらかの日用品と服とフード付きのコートを買った。もし新参者として同行するなら、手荷物がないのはあまりにも不自然だ。

服はこの世界ではありふれた冒険者のような服にした。白い長袖のシャツに、黒のスラックス。防寒のためブーツは膝下まである高いものにして、濃い茶色のベストも買った。因みに、ベストはシンプルに見えて実は結構多収納だ。

コートは白。本当はもっと目立たない無難な色にしたかったが、この時間帯に閉まりかけの店に入って文句を言える権利はない。

そして、気を付けるべきことは二つ。

一つ、小鳥だと言わないこと。説明もできないなら、何か裏があるのではないかと勘ぐられるに決まってる。それに、元の姿に戻れないのなら信じてくれる人もいないだろう。

二つ、名前を告げないこと。正確には、タクという名前を告げないこと。この名前は既にイチルに教えてある。小鳥が消えたタイミングで同じ名前の人間が現れるのは不自然だ。

髪と目の色はそう問題にならないと思う。白の髪は少ないが、ホーリエのように存在するし、緑の目なんて全く珍しくもない。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。