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4.


不思議なことは他にもある。

イチルだ。イチルは聖獣の時の俺の言葉が分かるのに、ペガサス、ドラゴン、マーメイド全ての言葉が分からなかった。俺の声しか届かない、と言った方が正しいのかもしれない。

魔力がないなら全ての聖獣の声を理解できない筈なのに、どうして俺の言葉だけ分かるんだろう。ダメだ、分からないことが多すぎる。

(とりあえず、戻ろう)

でも、どちらで戻ればいい?人間?それとも、小鳥?

俺は人間のままで戻りたいけど、面倒事になりそうな気がする。聖獣が完全に人になる。つまり、王であることと今までのことを話さなければならない。俺自身まだよく分かってないのに。

あまり力を持たない小鳥が突然人間になって戻ってきて、しかも、説明が出来ない。そんなの、怪しすぎるに決まってる。

どちらかと言うと小鳥を殺して、変身魔法でなりすましたと考える方が辻褄が合う。

(小鳥の方がいいね、うん)

でも、

「…あれ、どうやって小鳥になるんだっけ?」

俺からしてみれば勝手にトリップして、勝手に小鳥になって、勝手に人間に戻った。俺の意思を優先してくれたことは一度もない。それは、小鳥になりたいと思う今も同じらしい。

精霊達も困惑した感情を返しながらふわふわと漂うだけで、助けてくれそうにない。鈴虫の鳴き声が響く夜の川辺で一人ぼっち。

「…嘘ぉ」

その言葉は精霊達に揃って否定された。

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王には世界を守る義務がある。
そして、俺にとっての世界は君である。