吊られた男の物語

ある程度の予想外





人識君を転入させてから数日。

あれから人識君は俺の想像通りに問題を起こしてくれたらしく、というか上手い具合に渦中に巻き込まれてくれたらしく、並盛中は理想の険悪ムードに包まれていた。


ナイス人識君、お礼にしばらく双識君から匿ってあげるよ。
綱吉君もオヒメサマに言い寄られ付きまとわれているみたいで、毎夜恨み辛みのこもったメールが送られてくる。



あらら、守護者たちはボスに見放されそうだね。
守護者の名が泣くよ、山本武と獄寺隼人と、その他諸々。アレのどこが良いんだか、玩具として可愛がる分にはいいが、自分のそばに置いておきたいとは思わない。だったら小唄さんの方がずっと魅力的だ。びくびく怯えている弱々しい女の子がいいというなら、園樹さんの方が好みだ。眼鏡っこだし。触り甲斐があるし。



















「―――哀川巡、適当に呼んでもらって構わないが、俺を名字で呼ぶのは敵だけだから、それなりによろしく。つまらん面倒ごとは持ってくるなよ」











以上、俺がSHLでした自己紹介。
クラスは姫路光とボンゴレの面々と同じだ。
人識君と綱吉君以外、俺の言葉を聞いた生徒は口をぽかんとあけてアホ面をしていた。

愉快愉快。
そうそう、俺の外見は今は中学生に見えるように術を施してもらった。っていってもほとんど別人だが。俺の元々の容姿は赤髪赤眼で目立ちすぎるため、術に掛かっている人間には黒眼黒髪の普通の男子に。顔は、妹である哀川潤で。

もちろん時宮の友達に。
いや実際に身体縮めてもいいんだけど、一応他にも仕事やってるし変な薬とか飲みたくないし。奇野のところに行ったら実験台にされそうで怖いし。










「哀川の席は姫路の隣りだ。姫路、手ぇあげろ」








先生に命令されて気分を害したのか顔をしかめた女生徒の隣りに目をやる。
席があいていた。

言われた通り大人しく席に着くと、オヒメサマからの視線がもろに感じられた。

いた、いたたたた

香水がキツイ、中学生が化粧すんじゃねぇよ、糞が。
考えてることが丸分かりで、笑えてくる。














「あたしっ、姫路光っていうの!よろしくねぇ、巡くぅん」
「おぅ」










ふぅ、と視線をずらすと、怯えた様子でこちらを見ている笹川京子と目があった。






「(ん?)」
「ねぇ、巡君って彼女いるのぉ?」
「いねぇ」
「へぇ、もったいないねぇ、こんなにかっこいいのに!!ツナもそう思わない?」
「へっ、な、なんで俺に振るの?確かにかっこいいけど・・・」
「だよねぇ!!」








綱吉君、学校では白いんだな。
オヒメサマの猫撫で声を聞きながら、俺はずっと笹川京子を見ていた。





















































「人識君、ご苦労さま」
「疲れた・・・あのアサリ共、たかが女一人にのめりこみ過ぎだぜ」
「ははっ」






屋上にて人識君と二人きり。
彼の手足には無数の打撲痕や切り傷があり、制服の袖口からはまさかリストカットでもしたのかと想像させるような包帯まで巻かれていた。
本人は隠せているつもりなのだろうが、制服の下もおそらく傷だらけなのだろう。微かに血の匂いがした。









「徹底的にやるつもりなんだな」
「もちろん。でなきゃ、人識君の犠牲が無駄になるだろ?」
「かははっ、そんなこと思ってもいねぇ癖に」
「どうかな、俺は自分が楽しめればそれでいいし・・・」
「ところでさ」








「「出てこいよ」」













殺気を込めて、屋上の入り口を睨む。

気配を消し切れていない、未熟な人間がいることには初めから気付いていた。しかし、その相手が誰かまでは分からなかった。




だからこそ、素直にひょっこりと姿を現した人物に驚いた。






人識君だけ。







俺は笑う。













「やっと出てきてくれた、笹川京子」



























まぁ、要するにシナリオのうちってこと



Modoru Main Susumu
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