吊られた男の物語

彼女の犠牲者

その1.姫路光はミーハーで、イケメンとしか絡まない

その2.だが、他の生徒ともある程度仲良くしているため敵が少ない

その3.自意識過剰

その4.







「裏で笹川京子を虐めているんだよ」




あの子は稀に見る優しくていい子だから、人気者になるために利用されたんだろう。








華のように美しく可愛らしい彼女――――笹川京子。兄が一人いるものの、その彼でさえ姫路光のとりことなってしまった。
もちろん、自分の妹が虐められていることなど露ほども知らない。













「と、言う訳で人識君、キミの出番だよ」
「んんんぅぅぅうぅ!!んぐ、むむむっ、ん、んんーっっ!!!」
「あははははははははははは、何を言っているのか分からないよ?」













愛車ベンツの後部座席には、ガムテープで全身をぐるぐるに巻かれ猿轡をかまされた零崎人識が横たわっている。

苦しそうだ。

もちろん同意を得ているはずもなく、双識から逃走中だった彼を拉致してきたのだ。


呻いている人識を見て、巡はやれやれとため息をついた。





「仕方ないなぁ、コレだけは外してあげるよ」
「んぶはっ!てめぇ、巡!!俺を殺す気か!!」
「大丈夫、死んじゃってもちゃーんと生き返らせてあげるから問題ないよ。心配しないでいいよ」
「そういう問題じゃねぇ!」
「あっははははははははははは、愉快愉快」





どんなに後部座席で喚こうが、前を見て運転する。
安全運転第一。






「今から並盛中学校ってことに行くから、ちょっと一発さ、問題起こしてきてくれない?あ、やっぱり二発でも散発でもいいよ。もう転入続きはしてあるから。そうそう、零崎は駄目ね。俺が潤に怒られる」
「・・・零崎を名乗ったっていう命知らずな女がいる中学校か?俺、歳合わなくね?」
「ちゃんと中学生に見えるから平気平気、ノープロ」
「一回死ぬか?」
「今更?これまで何回死んだっけな。っていうか、知ってたんだね?双識君から聞いてたの?」
「あぁ、まぁ、気をつけろ程度に」
「なら話が早い」











急ブレーキを踏んで車を止める。
その反動で人識君がごすっ、と運転座席に当たって落ちた。



何人か跳ね飛ばしちゃったけど生きてるよね。
ああ、うん、よかった生きてる生きてる。
車を降りて人識君を抱きかかえると、真っ赤になりながらうねうねと腕の中で暴れ出した。








「はははっ、いくら俺がかっこいいからって照れるなよ」
「ば、ばばばばばばっ、ばぁか!そんなんじゃねぇし!!何処に連れて行くんだよ!!おい!聞いてんのか!!この誘拐犯!!兄貴にチクってやるからな!!!」
「双識に言っても無駄無駄。これから行くのは保健室だよ。もう並盛中学校についたからね。あ、保健室っていっても健全な意味だからね?流石に自分より小さな少年を襲う趣味はないから・・・手を出すなら高校卒業してからかな」









今の並盛中で唯一安全な場所は、おそらく保健室しかない。


なんたってあそこにはDr.シャマルがいる。
ボンゴレおかかえの闇医者で、世界一の腕を持つ医者。

彼はボンゴレに居るけれど、裏世界ともつながりがあるから、人識君と俺の名前を出せば手出しはできないだろう。ふふふ、こういう時は便利だね。



校舎に遠慮なく入り、保健室までの道を歩く。
初めて来たけど勘で行きゃなんとかなるだろ。どうやら今は授業中のようで、廊下には誰一人生徒の姿は見当たらない。

校内を徘徊しているという風紀委員にも遭遇することなく、保健室とプレートの下げられた教室に辿りついた。

























そして、俺はドアを蹴り倒した。



















「初めまして、Dr.シャマル」
























これぞ生贄ってやつ



Modoru Main Susumu
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