吊られた男の物語

仲間入り



「さてさてさて、説明してくれ。笹川京子がここにいるのはどういう事だ」






愛車ベンツの後部座席には、並盛中の女子制服を着た一人の児童。彼女は何故か血塗れで、ぐったりとシートに横たわり穏やかな寝息をたててそこにいた。ちぐはぐだ。



そして、その隣にはオールバックを掻きあげ崩し、気まずそうに麦わら帽子を被り直す一人の青年の姿がある。










「商店街の裏道を一人でふらふら歩いてて、なんだろなと思って近づいたら血塗れて、周囲の混乱を招かないように俺が拉致って連れてきたっちゃ」

「軋識君よ、そこでどうして俺のところに来る?何をどうして欲しいんだ?ちなみに俺は君に何かしてやろうという気はない。ロリコンがついに手を出した、実行犯なだけ」

「ロ、ロリコン・・・」

「俺に隠し事は無駄だってーの」







俺から視線を外した軋識は、眠っている笹川京子の制服をまじまじと見た。

スカートはぐっちょりと血で染まり、上半身もほぼ紅く制服の面影はない。ところ所乾きかけていて、頬についた血痕は手でこすればポロリと剥がれおちた。







「で、偶然俺の車があったから窓ガラスぶち破って侵入して、俺の帰りを待っていたと」

「そ、その通りっちゃ・・・・・」

「そういうときは俺じゃなくて双識君に連絡をとるべきだろ。敵か味方か分からない俺より、家賊の双識君のところの方が安全安心だろ」

「・・・お前の方がよっぽど安全だと判断したっちゃ」

「そうか、それは嬉しい限りだ」

「お前はこの子が零崎だと知ってたっちゃか?」

「ああ、最近覚醒したばかりだ。だがこれが初めての殺人じゃあない」

「なんですぐに連絡よこさなかったっちゃ・・・・・・」

「俺様は忙しい。コイツと人識君が通ってる並盛中学校ってとこに面倒くさいのがいてな、一筋縄じゃいかなそうだったんだ」

「バレバレな嘘つくなっちゃ」









べし、と頭を殴られて、笑う。









「・・・ん、あれ、ここどこ?」

「おはよう笹川京子」

「巡、君?どうしたの?」

「殺人鬼な君に素敵な仲間を紹介しに来たのさ」

「仲間?」

「仲間じゃなくって家賊っちゃ。初めまして、俺は零崎軋識、お前の家賊だっちゃ」










ぱち、と笹川京子は目を見開いた。

人殺しをする瞬間でもそんな表情は見られなかったから、少し魅入ってしまった。








「かぞく?」

「そう。零崎一賊。血の繋がりではなく流血の繋がりで結ばれた、殺人鬼集団。人を殺すことは呼吸に等しく家賊に仇なす生物は皆殺し、根絶やしにする鬼だよ」

「俺はお前を迎えに来たっちゃ」

「お兄ちゃん、って呼んであげてね。でもあんまり近づきすぎないように、ロリコン集団でもあるから」








もっとも、それをして興奮するのは一人だけだろうけど、と付け加えれば軋識君に注意される。










「ありがとう、巡君」

「いいえ、可愛い子には紳士だからね」

「ふふっ、よろしくお願いします、軋識兄さん」







軋識君が手を差し出すと、笹川京子もつられて手を出し、微笑みながら握手を交わした。






彼女を見つけたのが軋識君で良かった。
これがあの変態だったら彼女に手を出しかねないだろうな。

この二人、実は癒し系だったのか?


うんうんと頷きながらその光景を見ていると、笹川京子が「あ」と声をもらした。















「“お兄ちゃん”って呼ぶのは、実の兄だけですよ?」









どうやら、並盛中のアイドルはなかなか手強いらしい。





























さて、次は誰に会いに行こうか


Modoru Main Susumu
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