吊られた男の物語

リンチと


「零崎!テメェ、なんでまだ学校に来れるんだよ」
「ひかりちゃんを傷付けたくせに」
「死んじまえよ」
「転校生だからって調子に乗るな」
「お前なんて死ねばいいんだ」












ははは。
朝学校に来て教室に人識君がいないから始業までの暇つぶしに校舎裏まで捜しに来てみれば、定番の虐めシーンの真っ最中だった。


四、五人の男子生徒に囲まれているのは人識君。


罵倒の嵐。これからリンチされるのかな。
でも人識君はけろっとした顔をして、つまらなさそうに欠伸をして突っ立ったまま。そりゃあ表世界の、しかも一般人の攻撃なんて痛くもかゆくもないだろう。

庇う?
何で?
最低?



嫌だな、俺は最上だよ。

人識君は刺青のある頬を指でひっかいた。






「お前ら、ばっかじゃねーの?そんなにあの女が大事か?俺があの女を襲ったところ見たのか?物的証拠は?並盛を牛耳ってるフランスパンもどきらは、俺があの女を犯してるところを見たのか?泣き叫んでる声を聞いたのか?あんな女、犯したところで俺にゃあ何のメリットもねーだろ、見た目通りの男好きで、誰にでも股開くような尻軽なんて抱きたくもねーよ。誰が好き好んで汚物に触るかってんだ、かははっ」










吐き捨てるように人識君が言うと、一人の男子生徒を彼に向かって拳を振り上げた。


ゴキ、と鈍い音がして人識君が殴られた。
避ければいいのに。

しばらくの間彼らは暴行を加えたのち、満足そうに去って行った。








「遅れて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん」
「かはは、いたのか。もしかして手当てしに来てくれたとか?」
「俺を誰だと思ってる?無様なお前の姿を拝みにきたんだよ、自惚れるなよ?」




げし、と足で蹴り上げた。


殴られた箇所が鳩尾だったのがわずかに効いたらしく、若干涙目で見上げてくる。









「おお、その表情イイな、ゾクゾクする」
「はぁ?」
「冗談だ、可愛いとは思うがな」






地面に伏せた人識君の横を通り過ぎて、先ほどの彼らの後を追った。































「笹川京子、キミは何をしている?」
「うん?見て分からない?」
「うん、さっき人識君を殴る蹴るの暴行を加えていた彼らの脳みそを針で抉りだしているのは理解できるな。何やってんの?」
「大正解」
「楽しいか?」
「楽しくないよ。たまたまここにいたから、暇つぶしに」











普通のサイズよりもかなり大きめの、羊毛フェルト細工を作るときに使用される、フェルティングニードルで、笹川京子は彼らの頭部をぶすぶすと刺していた。

羊毛をちくちくと刺し固めることで、さまざまな造形が楽しめる。

羊毛の繊維にあるうろこ状の表皮を針先の小さな凹凸で引っ掛け絡ませることでフェルト化していく、特殊な専用針だ。

凹凸が一定の向きにないのか、笹川京子の持つニードルの先端には圧縮しきれていない血管の繊維や肉がくっついていた。









「女の子らしい武器だな」
「これ便利なの、服があんまり汚れないし、飛び散らないし・・・驚かないの?」
「何故驚く必要がある?今更そんなモノ見たところでどうとも思わないさ。さぁ、気は済んだか?それの処理をしなければならないんだ。笹川京子、キミは邪魔だ」





退け、といえばすぐに横にどいてくれた。
頭部がところどころ陥没していたり奇妙に髪の毛が絡まっていたりしたが、四肢が繋がっている分運びやすかった。







「なんで処理するの?そのままにしておけばいいじゃない」
「馬鹿か、警察とか面倒だろ。まぁ買収すればどうにでもなるけどな。この程度のつまらないことで俺の仕事の邪魔をされたら気に食わないだけだ
「ありがとう、哀川君」















「名前で呼べ、俺を名字で呼ぶのは敵だけだ」









血塗れの彼女にハンカチを渡した。

































誰であろうと敵になるなら踏み潰すだけだよ





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