参加者、改め惨加者







氏神イヴ―――主催者


白鳥小鳥―――秘書


瀬戸水面―――青年実業家


匂宮歪夢―――殺し屋


闇口十六夜――執事


幾重千里―――作曲家


幾重万里―――演奏家










「なーんで殺し名が乗ってんのかねぇ・・・しかも序列一位と二位かよ。あ、オレ達入れたら上位三名そろってんじゃん」




自室に戻って、乗客の名簿をずらりと並べ見比べていた楽識。

主催者も含めてだが、乗客は九人しかいないらしい。

この中にあの少女がいるのか・・・



鋭い目つきで名前の書かれた紙を睨みつけた。







「氏神イヴってーと、確かなんかやらかして家から追放されたお嬢サマだよな?なんでこんな豪華客船しきってんだよ」





まぁ財力の世界だから手切れ金でも有り余ってんだろうけど。


羨ましいな畜生。





楽識が羨む理由―――働かなくてもお金があること。


いや、楽識も芸術家であるためそれなりに収入はあるのだが。けれど、波がある。スランプ期に入ると収入0ということも多く、安定した生活とはいえないのだ。


本人の技術は一流の職人をはるかに上回るほど。



しかし、いかんせん彼の美学は少数派。


一から十まで完璧にソツなくこなしてしまうのだが、作品が作品だ。


彼の愛する“アカ”と、異常なまでの熱意、そして芸術に対する狂気が繊細かつ大胆に表現され、それ以外のものはない。



“狂った美学”と称される楽識の芸術品は、表の世界および裏の世界においても相当な評価をしてもらえないのだ。



当然、顧客も少ない。












コンコン







「んー、どーぞ」

「やぁラン!私がいなくて寂しかったかい?」

「そりゃあオレの台詞だ。兄貴になんつー口の聞き方だっての」

「三つ程度しか違わないのになにを言っているのやら・・・おや、何をしているんだい?」





やれやれと肩を落とす双は、オレの持っている物に興味を示したのか紙を覗き込んできた。






「名簿?」

「おーよ。つか、なんで殺し名ばっかいるんだよ。おかしくないか?」

「氏神が主催しているのだから乗客が普通じゃないのは当然だと思うけれどね」

「…それもそうか、ははっ、言えてるわな」





苦笑しながら、双に紙を渡す。

・・・最初っからコイツに聞きゃ良かったんじゃねーの?




氏神と知り合いなら顔くらい知ってんだろ。







「なぁ」

「ん?」

「そん中にさ、銀髪っているか?」

「・・・どうして私に聞くのかな?」






オレは一瞬、答えるのに躊躇った。



成人過ぎた男が、こんな風にして言うのは少し女々しいかもしれない。


ましてや、相手は自分より幼い少女だ。




・・・でも、会ってみたい。













「・・・惚れたから」







「・・・は?」

「だから惚れたんだって!!」







双はぽかん、と口を開けて驚いていた。



まぁな!

今まで美学とか芸術がどうとかほざいてたオレが急にこんなこと言い出したんだからびっくりもするよな!!




笑われるかなと思っていたら、なんか下向いてプルプル震えてやがった。



で、肩をつかまれた。









「オイオイなん「とうとう女性に興味を持ち出したんだね!!」・・・その言い方だとオレが男好きに聞こえるんだが」






オレだって男よ?







「いやいやいや、ランは美人だったら誰でもいいという噂が流れていたからね!!」

「オレはノーマルだ!!」





誰だそんな妙な噂流したの!!!



人識か!?

あのイタズラ小僧め!!!








「ッいいから銀髪の女がいるのかいないのかはっきりしやがれ!!」

「ぎ、銀髪の女の子?うーん・・・いたっけかなぁ?」





こめかみに指を当ててうなりだす始末。








「氏神さんは金だし、秘書さんは茶・・・残りの人はみんな黒だったような」

「いねーのか」




いや、待て。


名簿にのってない乗客っておかしくないか?





「どんな子なんだい?」

「ん、んんんなっ、はぁ!?」






双識が問うと、楽識は真っ赤に頬を染めた。



いつも自分がからかうだけに、逆の立場になると挙動不審になるらしい。






「き、綺麗な銀髪で・・・」

「ふんふん」

「真っ白なシャツに黒と赤のネクタイで、チェックのプリーツスカートで―――




瞳が赤かった」

「・・・・・・・・・・ん?」

「目が緋色だった」







双識の動きが停止した。


そりゃあそうだろう。

やっと生きた人間の、しかも女性に惚れたというのに結局行き着くのが赤なのだから。




尊敬する愛しい兄だ。

惚れた女性と幸せになってほしいと思った矢先の告白はキツい。


そんなに赤が好きか?
その女性が赤じゃなかったら惚れなかったのか?

期待外れという落胆は非常に大きかった。








「な、なにがっかりしてんだよ」

「う、うふふふふ、なぁんだ、結局はそういうことなのかい?まったくぬか喜びさせてくれる、なんだってんだよこの愚兄が」

「(壊れた!!!)」






こうなったら、どんな手を使ってでもその少女を探し出してやろう。


このダメな兄貴に、愛の素晴らしさを教えてやらなければ!!



・・・という、双識の奇妙な使命感が燃え滾った瞬間だった。









楽識は不気味に笑う弟の姿に若干・・・いやかなり引きながら、あの少女に再び会えることを夢見ていた。



























(なぁ十六夜)
(はい、なんでしょうか我が主)
(嫌な予感がするのは私だけか?)
(ああ、僕も同感です)



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