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社会復帰だとか更生の証明とか、綺麗で面倒くさい理由で大学に通っているのはアケチも蓮も同じで、だからこそ違う部分が際立つというか、変わった部分が気になって仕方ないというか。

「×××君って、何時もネコ連れてるよね。なんで?」
「勝手に入ってくるんだよ」
「嘘つけ」

戸籍上の名前はまだ慣れねえなあ、と鞄の中で呻いていれば、あんまりな返答が聞こえたものでつい口を挟む。誰だよ鞄を開けてじっとこちらを見て無言で入れと命令してきたのは。まあ最初は勝手に入ってたけども。
ワガハイの返答、よそから聞けばただの鳴き声にきゃあと色めき立った声が上がる。こんなに愛想がないのに付きまとわれるのはいい迷惑だろうに、押せば勝ちという真理を知っているらしい声の主はまだアケチについてくる様子だ。鞄に押し込められているから見えないけれども。

「へえぇ、可愛いね。あと×××君面白いね」
「そう。じゃあね」
「ね、連絡先、」

ぐらんぐらんと遠慮なく揺れる鞄は結構な速度を示していて、背後のヒール音も負けじと迫る。「女ってタフだなー」と誰にともなく口にする。

「面倒だから教えない」
「そっか。やっぱり面白いねえ」
「……大学デビューっつうのかな。お前のそれ」
「うるさい」
「やだ!猫と会話してるー!可愛いー!」
「………」
「本当、タフだなー……」

ついにワガハイの声に返事をしてしまったアケチが、愛想なぞドブに捨てたような舌打ちをかます。それでも付いてくる女学生は逞しいというか、なんというか、これならシャドウに見つかるのがマシだと思えるほどに振り切れない。
今まではアケチと共に行動するのが苦ではなかったが、こういうパターンを考えると控えるべきだろうか、とアケチの酷い表情を覗きみてほんの少し同情した。思い切り頭を押し込まれた瞬間に消える程度の感情だった。




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