おやすみ!


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実に軽い気持ちで、書いたそのまま更新します。名前変換なし。



0601 22:49

 昼休み、滅多に使用しない空き教室を指定して呼び出される。もう何度目だろう。憂鬱な思いで胸がいっぱいになる。私は真剣にマネージャーをしてるのに。
 無視すれば面倒なことになるのを、とっくの昔に学んだ私は、素直に指定された場所に向かう。特別教室棟の視聴覚準備室。防音バッチリ。嫌な感じ。
 無言でスライドの扉を開ける。思ったよりも乱暴だったみたいで、結構大きな音が鳴った。すでに教室にいた小さな背中が、びくりと震える。…一人。

「あ、も、桃井さん。来てくれてありがとうっ!」
「…へ?」

 振り向いた小さな背中の持ち主は、確か大ちゃんと同じクラスの子。ぱっと花が咲いたような笑顔を向けられて、別の意味で身構える。
 入って入って、と促されて、今度は静かに扉を閉めて教室の中に入る。途端に、ロッカーや物陰からたくさんの女子が出てきて…とかは、ないみたい。

「あのね桃井さん。突然だけど私、青峰くんが好きなんです!」

 キラキラした目でいきなりそう言った彼女は、眩しくて、なんとなくすれてた心が晴れたような、そんな気がした。


くろばす


0528 00:15

「一期お兄さんは、粟田口兄弟のお兄さんですよね」
「まあ体が大きいのもあって、そういうことになりますな」
「じゃあ私も一期お兄さんにお兄さんを求めてもいいということですな?」
「…はい?」
「お兄ちゃん」
「………」

「わ、いちにい固まってる!」
「あー、妹はいないもんね」
「そういう問題なのか…?」

「お兄ちゃん!頭を撫でてください!」
「………」

「お、頭撫でた」
「顔真っ赤だね」

「お兄ちゃん!ハグを!」
「は…はぐ…?はぐ…剥ぐ……剥ぐ!?」
「ハグ!ぎゅーっと!抱きしめてプリーズ!」
「は、はぐ…」

「はぐって何?」
「抱きしめることらしいな」
「えー、いちにいずるい!ボクも主抱きしめたい!」

「で、では…僭越ながら…」
「お兄ちゃんが妹を抱きしめるのに僭越とかないです!自然に!ぐわっと!」

「いちにいって大将のことオンナノコとして見てるとこあるからな」
「鯰尾兄ちゃんたちも大将のこと好きっぽいよな」
「まあ女の子って主しかいないわけだしね」

「わ、一期お兄さん!」
「「「!!?」」」
「いちにい!」
「やべーな、顔真っ赤だ」
「薬研くんたち、一期お兄さんが!」
「あーあ、主がいちにいの純情弄ぶからだよ」
「純情?」
「乱、背中支えろ。厚は腰の方な。大将は足持ってくれ」
「はーい」
「分かった」
「ねえ純情ってなんぞ?」
「大将、早く」
「あ、はい」


とうらぶ


0526 11:15

「主どのー!虎徹10倍が延長ですぞ!」
「まじですか!お恥ずかしながら審神者、金曜から熱を出してしまって、君たち出陣も遠征も何もできてませんからね!ありがたいです!」
「ぬしさまは多忙でいらっしゃるゆえ、平日も最低限しか活動ができませんから…この小狐、さみしゅうございます」
「………」
「鳴狐も寂しいと思っておりますぞ!もちろんわたくしめも、主どのとの触れ合いの少ない日は寂しく感じます!」
「ふおお、思いがけず狐ちゃんまみれ… !今日はこのまま狐ちゃんを愛でていたい…!」
「どうぞぬしさま。この毛並みはぬしさまのために艶があるのです」
「鳴狐も頭を撫でて欲しいと申しております!わたくしめは先ほど毛づくろいを終えたばかりですから、よい手触りです!」
「…主。どうぞ」
「な、鳴狐くん…!9日ぶりの声…!撫でちゃるー!撫で回しちゃりますよー!」

「…ふむ。ぬしさまはつんでれがお好きゆえ、普段からでれでれの小狐丸が選ばれぬのは道理…」
「元気を出してくだされ小狐丸どのー!主どのはみな平等に可愛がってくださっています!」

「鳴狐くん、ほっぺもちもちさせてください!」
「………」
「ふおお、すりすりやわらかもっちもち…!」

「薙刀を脇差になおしたのが鯰尾と骨喰だったよね」
「清光、真剣な顔して言わないで。小狐丸も『それだ!』みたいな顔しないで。長谷部どこ行くの」


とうらぶ


0525 11:30

 生あるもの、いずれかは必ず死が訪れる。死を恐れれば何事もできず。しかして死を侮れば後悔が必至となる。
 つまりは生ある限り、もがいて足掻いて生きろと。文字通り、必死に。

「(そうして生きた結果が…これじゃあ…)」

 余りにも、哀れじゃないか。


おりじなる


0520 20:03

「気づけば5月も後半ですよ」
「そうだね」
「虎徹10倍、あと1週間ちょいですよ」
「そうだね」
「…なんで審神者のとこには検非違使すら来ないんですかね?」
「…さあ?」
「なんのために金の投石兵いっぱい作ったと思ってんですか…日課すらこなせない!検非違使5回も来てくれない!なぜ!」
「日頃の行いじゃないの」
「日頃の行いがいいから!」
「………」
「安定くん、無視は良くない」


とうらぶ


0519 11:42

「やっすっさっだくぅ〜ん」
「…何、気持ち悪いよ?」
「見さらせ!この!輝かしき点数を!!!」
「…えーっと、きゅうじゅうよん…でいいんだっけ」
「そう、94!点!すごいでしょ!?審神者頑張りました!」
「二百点満点?」
「100点満点!!もう、安定くんいじわる!」
「冗談だよ。…よく頑張ったね、おめでとう」
「へへ、安定くんに褒められると嬉しいですな」
「主!てすとどうだった!?」
「清光くん!聞いてください、94点です!」
「すごい!主すごいよ!これでまた一緒に遊べるね!」
「清光、主てすと終わって疲れてるんだから、少し休ませてあげたら?」
「え?私元気ですけど」
「疲れた、でしょ?」
「うん、つかれたー」
「じゃ、そういうことだから、部屋に連れてくね」
「ちょ、安定っ!?」

「安定くん、君と出会ってからまだ半年も経ってないわけですけど、審神者分かってきました。君は結構嫉妬しいですね」
「うるさいよ」
「あと甘えん坊ですね」
「うるさいってば」
「審神者も君たちには甘えてますからね〜」
「(君。たち)」
「やっぱ姿だけでも同年代くらいの人がいるといいですね。安心する」
「…脇差連中の方が見た目は近いんじゃないの」
「んー、まあそうなんだけど。清光くんは初めての刀だし、安定くんは4番目でしょ?右も左も分かんなくて、しかも期末テストの勉強もあってあっぷあっぷしてた私を、ずっと支えてくれましたから。だから、まあ…ちょっとだけ特別なんですよ、君たちは」
「…そう」
「うん、そうです」

 仕方ないから、今は君たち、でもいいかな、なんて。


とうらぶ


0517 22:47

「長谷部、審神者もうダメです」
「主!?どうされたのですか!?」
「審神者は明日学校でテストがあります…80点以上取らないと再テストです…さらに審神者は今回のテストが既に再テストです…」
「て、てすと…?」
「試験のことです…って、試験も分からないか?」
「てすとのことは分かりませんが、何かお役にたてることはありませんか?」
「やだ長谷部、主命待ちしてる〜〜肩揉んで」
「主命とあらば」

「いやそうじゃなくて、審神者明日テストなんですってば」
「ならさっさと勉強しなよ」
「安定くん冷たい〜」
「主、頑張って勉強してよ!再てすとになったらまた遊ぶ時間減るじゃん!」
「清光くん…!安定くんこれだよ、審神者が求めてたのこういうの」
「じゃあさっさと勉強しなってば」
「……ん?安定くんそれは?審神者が再テスト回避したらデレると?そういう?」
「あーもう、うるさいな!清光行くよ!」
「えー?俺もっと主といたい」
「お前がいると邪魔になる」
「ちょ、わ、引きずるなって!!」
「…あー、勉強すっか」


とうらぶ


0515 09:45

「安定は、沖田さんが一番だものね」

 困ったように笑う君を見てると、僕は無性に苛つく。

「私のことは、無理に主と思わなくてもいいから」

 物分かりよくその顔で言う君を見てると、一瞬斬り伏せたいような衝動が走る。
 僕は清光みたいに、愛してくれれば誰でもいいってわけじゃない。自分が主と認める人でないと。
 だって彼女は僕を振るわない。扱いにくい僕を、好んで手ずから扱ってくれる人じゃない。

 でも僕のことを一番に愛してくれたら、僕だって君を一番に思うのにな。大勢の中の一振りだとしても、引け目なく僕を愛してくれたなら。僕だって君を一番に愛するのになあ。

「(なんて、愛される努力をしない僕が、愛してもらえるなんて。そんなこと…)」

 ああ、嫌だなあ。刀なんて、使いやすいのが一番じゃん。


とうらぶ


0512 12:10

「猫ちゃん」

 お嬢の僕を呼ぶ声が好きや。坊と変わらず弟のように接してくれて、明蛇のみんなを家族に思うお嬢の優しさが好きや。嬉しい時に笑って悲しい時に泣く素直さも、その笑顔もその涙も、お嬢という人間が僕は好きなんやと思う。
 初恋は早かった。自覚した時にはもうすでに始まっとったから。気付いた時には坊やお嬢と一緒におったし、一緒に育てられとった。兄弟のように仲良く、でも一線は越えないよう…

「猫ちゃん、一緒にお散歩しよ」

 僕が無意識に気をつけてた一線を、お嬢は軽く越えてしまう。それは傍にいていいと言われてるようで、とても安心した。
 例えば手を繋ぐとか、例えば目があった時に笑いかけてくれるとか、例えば内緒話とか、例えば二人で出かけるとか。一人じゃできないことをお嬢とすると、僕はたまらなく嬉しくなる。その嬉しくなる気持ちが“恋”なのはあまり良くないことなんやろな、と分かったのは、もう初恋を認識してから年を重ねていた時のことだった。

「来年はこうして休日でも、猫ちゃんとお散歩できんのやねえ」
「ほんの三年ですよ。三年経って卒業したら、僕もここで働きますから」
「…猫ちゃん、あの制服似合うやろなあ」

 楽しみやね、と笑うお嬢。ああ、かいらし、好きやなあ。繋いでる手に少しだけ力を込める。この小さな手を離さんよう捕まえとけるんが、ずっと僕やったらええなあ。


あおえく


0510 22:41

「雨降って地固まるってやつなんやろかねえ。どう思う?廉ちゃん」
「まあ結果オーライってやつなんかな思いますけど」
「せやろ?不浄王は恐ろしゅうて敵わんかったけど、燐くんって子ぉがやっつけてくれはったお陰で、父様も竜ちゃんもなんやすっきりした顔してはるし…蝮ちゃんは難儀やけど、柔ちゃんようやっと決心しはったみたいやしなあ」
「和尚と坊はともかく、柔兄たちはちょっと複雑な心境ですわ」
「そうなん?まあでもそうやなあ、兄様が結婚するんやし、考えるとこはあるやろなぁ」
「うーん、まあそれでええですわ」
「…廉ちゃん、なんや悩みごとでもあるやろ」
「え?いやー、お嬢に心配してもらえるん嬉しいですわ」
「私はお飾りのお嬢やからな、言えへんこともいっぱいあるやろけど、どうしてもあかんときは頼ってや?一緒に悩むくらいしかでけへんけど、廉ちゃんのこと一番に考えるで」
「…ほんまお嬢は、あかんですな」
「あかんか」
「あかんですよ。ほんま、あかんわ…」
「堪忍な。私、生まれる家間違えたんや。生まれる前から間違ってしもたから、間違いまくりの人生なんよ。堪忍な。…堪忍な、廉造」
「嫌やなお嬢…あかんのは俺もや…俺も間違うたんや…」
「二人して間違ってしまったなあ。こらあかんなあ。どないしよなあ、どうすることもでけへんなあ」
「………」
「廉ちゃん、自由に生きはったらええよ。私なあ、廉ちゃんが嫌やゆうても、廉ちゃんの味方したいん。私は勝手に廉ちゃんの味方でおるから、廉ちゃんも勝手に自由にしたらええよ。私、廉ちゃんが泣きそうな顔しとるん、好かんのや」
「…お嬢、堪忍な」
「ええんよ。ああ、そやなあ。今度は間違わんと生まれてこられたらええなあ」


あおえく




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