教授という人を、一言で表せる単語を私は知らない。
そんな一つの単語にきれいに収まるような人じゃないのだ、彼は。というか、人間なのかさえ最初は疑った。

まぁ、教授の説明はさておき、私の自己紹介もしなくては。
私はみょうじなまえ、高校一年生という青春の真っ盛りである。帰宅部の為、あまり忙しくはない。
そして、さっき言った教授は私の隣の家に住んでいるのだけど、教授の隣の家には私の幼馴染みの三つ子ちゃんが住んでいる。

その三つ子の長女である亜衣ちゃんから、教授の生存確認を頼まれたのは、昨日。

今は夏。真夏。
彼なら、一歩間違えれば力尽きてステーキになってしまう季節である。
なのに、教授は洋館から出てこない。

「……まぁ、何してるかは想像つくけどね」

ため息をついて、私は水の入ったペットボトル(2L・教授用)を片手に、無意味であろうチャイムを鳴らした。
思った通り反応が無いので、勝手に上がり込む。

「教授、生きてるー? ……うわっ……」

室内は、そりゃあもう暑かった。
どこの熱帯雨林?とでも言いたくなる空気に、目眩を覚える。
見回してみれば、窓も開けてないのだから当然だ。そして、この家の住人は想像通りソファーの上でぐったりしていた。

「……あーもう……教授!」

ぴくりと微かに反応した彼に、ペットボトルを渡す。ギラリと目を光らせた教授は、恐ろしい勢いでそれを飲み干していく。
私はとりあえず、洋館の窓を開け放した。
風が洋館を通り抜ける。ふぅ。

その間に教授は回復したらしい。

「いーつもすまないねぇ……」
「…………」
「なまえちゃん、台詞を忘れてるよ!」
「…………ソレハイワナイヤクソクデショ」

片言の台詞でも満足する教授は、非常に安上がりだ。
私は、教授の座っているソファーの前の椅子に座る。

「扇風機、どこかあったよね?」

頷く教授。

「どこやったの?」

顎に手をあてて首を捻る教授。
……毎度のことながら頭が痛い。

「それはさておき、なまえちゃん」
「なに?」
「アイスかかき氷はないのかな?」
「…………」

サングラスの奥の目が、こっちを見ている。
私もまけじと視線を返す。

「残念ながら、アイスもかき氷もありません」
「…………夏なのに?」
「食べたいなら自分で買いに行くの!」

がっくりと肩を落とす教授。
しかし、すぐにまたなにか思い付いたのか、顔を上げた。

「スイカでも構わないよ!」
「…………」

この人、本当に大人なんだろうか。元々年齢は分からないけど。
スイカも無いことを伝えれば、再び肩を落とした。
全くもう。

「ほら、教授。いくよ」
「……どこに?」
「コンビニ! アイス買いに行くの!」

彼の手を引っ張ると、意外とあっさり教授は立ち上がった。
女子高生に奢られる元教授ってどうなの?なんて思うけど、いつも本を借りてるお礼ってことにしてあげよう。



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