「あーっ、腹減った!」

そう言うなり、私の前の席を陣取る成宮。
ちなみに、そこは成宮の席ではなく、他の男子の席である。
まぁ、さすがに他の人の席と間違えて座るほどのバカじゃないはずだから(多分)、私に用があったんだろうと推測してみる。

「何か今失礼なこと考えたでしょ、なまえ」
「気のせいだと思うよ」
「いーや、気のせいじゃないね!」

何か本当に証拠でもあるんじゃないかという程、自信満々に言い切る彼。
今日も、いつも通りの都のプリンス様は健在らしい。
それにしても、あながち間違ってないのが怖いけど。

「まぁいいや。ねー、なまえ何か持ってない?」
「何かって?」
「食いもん!」
「えー……」

食べ物ねぇ……。
適当にカバンをあさってみるが、生憎今日はお菓子も何も持ってきてなかった。

「ごめん、何も無いわ」
「えー、ケチってんじゃないの?」
「んなわけないでしょ」

どこまでも失礼なやつだ。
本当に無いのだと、もう一度伝えると彼はショックを受けたような顔をした。
え、そんな顔されると罪悪感が何故か出てくるんだけど。

「嘘ー、なまえだけが頼りだったのに……」

何だか可哀想になり、頭を抱えた成宮に話し掛ける。

「購買行ってくれば……?」
「……なまえ行ってきて」
「何でよ」
「腹が減って力が出ない……」
「どこぞのアンパンヒーローですか貴方は」
「アンパン食いたい……」

ダメだ。会話のキャッチボールってやつが出来てない。
何だかんだで私も甘いなぁ、なんて思いつつ立ち上がる。仕方ない。

「成宮、お金」
「…………後でー」
「そう言って返ってきた試しが無いんだけど」
「……」

スルーですかこのやろう。
小銭が入っているか確かめようと、スカートのポケットに手を入れれば、何かの感触。
うん?
そのままそれを出してみる。

「……あ、」

飴が二つ。レモン味とイチゴ味。
あぁ、何か朝に成宮が食べるかと思って、突っ込んできた気がする。
忘れてた。
少し迷ってから、イチゴ味の方の包装を破く。

「成宮、」
「ん?」
「はい、飴ちゃん」

顔を上げた成宮の口に、イチゴの飴を押し込んでやる。
驚いたような顔をした彼は、すぐに飴だと分かったようだ。
私もレモン味の飴を口に放り込む。

「んめー、サンキューなまえ」
「え、足りる? それだけで」

てっきり足りないかと思って、結局購買行くつもりだったんだけど、アンパン。

「明日も持ってきてよコレ」

そう言ってニシシと笑ったプリンス様は、どうやらイチゴの飴がお気に召したらしい。



140828

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