教室でいつも通り、お昼ご飯を食べていると一也のごつごつした指が私の左手に絡まる。

バカップルだと言われることはしばしばだけど、私からベタベタしているんじゃないことを御理解頂きたい。
クラスメートは最初こそからかってきたものの、今では何も言わない。またか…みたいな視線を送ってくるだけだ。
何を言っても一也が飄々としているからだろう。

ちなみに、右手じゃなく左手を繋いできたのは私がお弁当を食べているからだと推測。
彼はおにぎりだから、利き手じゃなくても良いんだと思う。
こういうところから、優しさが垣間見える……気がする。

「前から思ってたんだけど、なまえさー、」
「ん?」

卵焼きを口に持っていきながら、一也に顔を向ける。

「平均体温低くね?」

確かに、私の平均体温は35度半ばだ。
繋いでいる手でも、一也の方が温かい。

「普段は35度台だよ」
「へぇ、やっぱり低いな。今の季節は気持ちいいけど」
「えー、私の手が熱くなる」

そう返すと、一也が笑う。
繋いだ手は、だいぶ体温が上がっていた。

「冬が寒いんだよねー……」

ぽそりと言うと、彼は冬も手繋ぐから大丈夫なんて言った。
こういう台詞言うのって、恥ずかしくないのかな。さすがイケメンは違う。

「体温低いってことは、手だけ冷たいってわけじゃねぇんだろ?」
「まぁ、そうだね」

どうやら一也はおにぎりを食べ終わったらしい。私はまだお弁当を食べていないっていうのに。
野球部は食べる量も早さも普通じゃない。胃袋どうなってるんだろう。

すると、彼はおにぎりが無くなったことで自由となった手を、私の顔に近付ける。
突然の行動に狼狽える私。

「え、なに、」

楽しそうに口角を上げた一也は、そのまま私の前髪に触れる。
あの、近いです。あとここ教室。
なんて思ったけれど、言葉が詰まる。

「……っ、ちょ、」

思わず目を瞑ると、前髪が持ち上げられる感覚がして、何かがこつんとおでこに当たる。
そっと、目を開けると至近距離で一也の顔。

「……っ、一也」
「キスされると思った?」
「!」

にやりと意地の悪い笑顔を見せた彼に、文句を言おうと口を開いたら柔らかい感触に阻止された。体温が一気に上がる。あつい。
ていうか、キスされると思った?って、本当にしてるじゃない。

ちゅ、とわざとらしく音を鳴らして、唇が離される。

「……なまえ、体温上がったな」

私のおでこに触れて、そんなことを囁いた一也を軽く睨むと笑われた。
上がったどころか、私からしたら微熱だ。
あと、何度でも言うけどここ教室。




お題は瑠璃様から。
140831

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