16

頭がグワングワン揺れている。その衝撃で深い眠りから引きずり上げられた私は目を開けた。青い髪と腕にジャラジャラついた派手な腕環…黄泉だ。そっか今日は黄泉と任務だったっけ。ふぁぁわあ、と大きな欠伸をすると濡れたタオルが顔面に投げつけられた。…とりあえず顔を拭けということらしい。ゴシゴシと顔を拭いてサッパリとしてきたら頭も冴えてきた。同時に昨夜のことも思い出す。

「……イタチさんは?」
「さっき出て行った。もう昼だぞ」
「……」

虚空を見たままつぶやく私に不信感を抱いたのか、黄泉が私の顔の前で手をふる。それをパシンと払いのけながら寝間着を脱いでいった。慌てて黄泉が後ろを向く。行かなくちゃ、イタチさんと大蛇丸様の所に。素早く忍服を纏って扉から勢いよく走り出て行く。後ろから黄泉の怒鳴り声が聞こえるのを尻目にひたすら走った。二人の行き先なんか知らないけれど直感的にその方向に向かう。何故か根拠のない自信があったのだ。神社らしき階段を上っている途中で見つけた暁のコート。間違いなく大蛇丸様とイタチさんだ。

「……っ!」

…どちらの名前を呼べばいいのだろう。大蛇丸様かイタチさんか。何も考えずに勢いのまま口に出していたら、その名前は本心から私が必要とする人の名前だったはずなのに。イタチさんの後ろを歩く大蛇丸様がチラッと後ろを向き、私と目が合う。…今日はカブトとは一緒じゃないらしい。こんな時まで卑屈になっている情けない私。

「……大蛇丸様」

私が小さく名前を呼んだ瞬間に金縛りの術にかかったように身体が動かなくなった。あと少し、あと少しで二人に追いつけたのに。私が動けないなかで大蛇丸様から蛇が出て、イタチさんを襲う。私が襲われたわけでもないのに冷や汗と絶望感がやってきた。見るに見かねて固く目を閉じる。現実逃避だ。唯一の手がかりは聴覚だけだが、二人の話す会話はよく聞こえない。見たくないけれど見てしまう、聞きたくないけれど聞いてしまう。うっすら開けた目には大蛇丸様の背中しか写らなかった。

「イタチさん!」

いきなり解けた金縛りによろめきつつも大蛇丸様の元へ走っていく。わずかな間でも目なんか閉じなければ良かった。大蛇丸様しかいないってことはイタチさんはどうなったの?私が大蛇丸様に手を伸ばした瞬間、後ろから優しい匂いにつつまれた。

「……え、イタチさん…?」
「この眼の前では全てが無意味。大蛇丸は俺には勝てません」

振り向いた大蛇丸様には片腕がなくなっていた。押し殺した悲鳴を上げる私を慰めるように抱きしめてくれるイタチさん。大蛇丸様、大蛇丸様と繰り返す声は蚊の鳴くような声というのが何よりもしっくりくるものだった。情けない。

「名前…殺しなさい。……あなたがイタチを殺すのよ」
「大蛇丸様……」
「私とずっと一緒よ……あなたが望んでいた事でしょう」

ずっと一緒、その言葉につられてふらふらと歩きだそうとする私をイタチさんが必死に抑えこんでいた。大蛇丸様の首が伸び、私の首筋に噛みつく。そこから強烈に湧き出てきた熱と痛みに意識を遠のけた。……私は大蛇丸様とずっと一緒にいたいだけだったのに。

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