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イタチさんと私であの湖に来ていた。ウサギはキャベツを食べ終わるなりどこぞへと行ってしまい、イタチさんが散歩の途中だというから一緒に行くことにしたのだ。立ち上がった時には離れた手も歩いているうちに再びつながっており、きっとこれはイタチさんなりの慰めなのだと思う。あんなに大蛇丸様、大蛇丸様と連呼していた私の考えなんてすぐに見抜かれてしまうだろう。何をするでもなく水面を眺めていた。

「なぁ」
「何ですか?」
「大蛇丸の所に居ずらいなら俺の部屋に来ませんか」
「でも、迷惑でしょう」
「この場所を教えてくれたお礼、ってことで」

イタチさんの横顔を見ているうちに、それもアリかな〜なんて思ってしまう。でも、イタチさんと大蛇丸様、どちらが大切かと問われれば迷いなく大蛇丸様と答えるだろう。それに、いまイタチさんの所へ逃げてしまったら大蛇丸様に見放されてしまうかもしれない。うろうろと視線をさまよわせて悩んでいるとイタチさんは眉間にシワを形成していた。優柔不断な私に苛立ったのかどうか知らないが、ここでイタチさんを怒らせたら不味いことだけは確か。

「……御世話になります」

イタチさんの目が写輪眼に変わるのを見て、反射的に土下座をせんばかりの勢いで頭を下げるとイタチさんが鼻で笑う気配がした。…え?イタチさんってもっとこう、紳士で優しい人じゃなかったっけ。間違っても頭を下げてお願いする女の子を鼻で笑うような人じゃなかった気がする。恐る恐る顔を上げてイタチさんを見るとシニカルに笑っている。その笑顔がサソリさんと被って見えるのは何故だろう。


■ ■ ■


イタチさんと森から帰ると大蛇丸様は暁のアジトにいなかった。ホッとすると同時に、どこへ何をしに行かれたのかが気になっとしまう。とりあえず、歯ブラシやら着替えやらの日用品を取ってきますとイタチさんに言って大蛇丸様の部屋に来ていた。きっと口実だってバレているんだろうな。それでも何も言わずに、まして一緒に来るようなことをしないイタチさんは優しい。大蛇丸様の部屋からは落ち着く匂いがした。

「……」

部屋に誰もいないってことは、大蛇丸様はカブトも一緒に連れていったってことだ。置いていけばいいのにあんなやつ。もしくは大蛇丸様のアジトに置いてきてほしい。大切な人を取られた悔しさもあるが、私よりカブトをとった大蛇丸様に諦めもある。大丈夫、私にはまだイタチさんがいる。風呂敷一枚に収まった荷物を持ってイタチさんの部屋に向かう間、今後大蛇丸様のことは忘れようと心に決めた。

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